虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

WITH仙王 その19



 ──“オートアトリエ”。

 WITHシステムを搭載したことで、新たに【仙王】が発現させた能力だ。
 能力はこれまで語った通り、収納した品や繋げた先にある物を加工するというもの。

 元より【仙王】とは、仙丹を用いた職業の最上位職。
 それも特化職ではなく、できることすべてにバランスよく適性を持つ。

 彼女自身、面倒なのでやらないが仙丹でアイテムを作ることはできると言っていた。
 そういう仙術もあるし、煉丹術もその才覚でプロ並みに習熟しているからだ。

 そんな【仙王】がその力に目覚めたのは、WITHシステムによってできることが増えたため……従来以上の性能によって、自身の快適さを改善しようとしたのかもしれない。

「──まあ、何はともあれ、理屈はそういったものかと。仙丹は外部からの供給で尽きませんが、自動生成系の能力には何らかの身力の消耗が必須です。不動の状態で温存はしているでしょうが、それも時間の問題」

「……余裕だな、『生者』」

「いえ、意識と動きを切り離しているだけですよ。武人の言う無我の境地……とは少し違いますが、似たことができますので。端的に申せば、いずれはバテますので、それを待つのも一つの策でしょう」

「だが、それでは仕置きにならないな。早めに動くとしよう」

 俺が剣で降り注ぐ武器の雨を捌く中、ついに動き出した『闘仙』。
 当然、その行動には【仙王】も気づいているようで──仙術も降り注ぎ始める。

 まあ、武器の射出だけで防ぐのは難しいからな。
 アレから時間も経っている、消耗さえ気にしなければストックも溜まっているか。

「ロー、来ないで! あたしはここで、しばらく警戒という名の休憩を得るの!」

「何をバカなことを……! まだまだ学ばねばならないことが、ワンにはたくさんある! すでに事態は終息した、早く戻るぞ!」

「いや! せめて、あと七十二時間はここで休まないと無理!」

「長過ぎだ!!」

 丸三日……は、さすがに無理だろうな。
 抵抗の証は高位の仙術、それは『闘仙』でも連続で受ければ確実に体力を消耗するようなものばかり。

 くだらないと思われるようなことでも、当人にとっては全力で抗うべき死闘。
 俺を武器射出で留め、『闘仙』には本気の仙術で放つ。

 ……もちろん、分かっているのだろう。
 俺は自分のノリのためにあえて留まっているだけだし、『闘仙』も迷宮への被害を無視すれば平気で突破してくると。

「……もう撮影分は充分ですね。では、そろそろお開きにしましょうか。『闘仙』さん、お願いします」

「……分かった」

「く、来る……! あたしは負けない、この不屈の闘志が燃える限り、強制労働になんかに負けはしない!」

 この後の流れはお察しの通り。
 無事、不屈のニートさんは更生(強制)されるのだった。


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