虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

WITH仙王 その18



 サボるため、【仙王】は再び力を振るう。
 俺と『闘仙』はそれを阻む悪役、ということになっているみたいだな。

「開け──『ゲートコネクター』!」

「なっ、それは……!」

「えっ? 何かあったの?」

「……こ、これは凄い。『闘仙』さん、これは負けられませんね!」

 俺のやる気に不思議がる『闘仙』だが、これは仕方が無い。
 おそらく、仙術で生み出したであろう大量の武器、それを無数の穴から出したのだ。

 そう、それはまさに某宝物庫。
 仙術そのものじゃないのは、先ほどまで戦闘していた『邪仙霊』対策だったのだろう。

「『SEBAS』、これはもうノリでやらせてもらうぞ──“鍛造錬金・剣”」

《畏まりました。結界を操作、戦闘プログラムを実行します》

 錬産術で出すのは当然剣。
 肉体の方は『SEBAS』にすべて委ね、俺は移動方向の指定と魔道具や術の発動だけイメージすることに。

「うぉおおおおお!」

「……わざわざ捌く必要があるのか?」

「いえ、ノリです」

「そ、そうか──“隆山興”」

 毎度お馴染み『闘仙』の仙術(物理)。
 勢いよく拳を地面に叩きつけると、どういう理屈か地面が天井まで盛り上がった。

 それは自ずと剣から身を護る盾となり、自身(とついでに俺)を守っている。

「しかし……アレはどういう理屈だ? まったく尽きていないではないか」

「おそらく、現在進行形で生成も行っているのでしょう。ええ、まさか贋作の方もやっているなんて……恐ろしい攻撃です」

 天才である【仙王】だ。
 仙丹を溜め込んでいる穴の方で武器を製造し、それをさらにこちらに開いている穴へ繫ぐ……なんてこともできるだろう。

 くっ、どういう理屈か分からないが、少なくとも同じ形状の武器はいくつもあった。
 これは間違いなく、面倒とかそういう理由で構造の複製などもやっているはず!

「この山、いつまで持ちますか?」

「今の単純な攻撃ならば、仙丹を補給すれば無尽蔵に。だが、仙術を撃たれれば即座に破壊されるだろう」

 降り注ぐ武器の雨だが、さすがに『闘仙』の仙丹入りの山をも貫くほどの火力は出ていないようだ。

 それでも、壊れるときは壊れる。
 強力な仙術、もしくは強力な武器でも作れば突破してくるらしい。

「では、私が正面に。その間に『闘仙』さんは、【仙王】さんの下へ」

「それは構わんが……そのままやるのか?」

「? ええ、当然」

「…………そうか」

 まあ、死んでも死なないような奴が、どうして防御をするのだろうか、みたいな疑念があるのかもしれない。

 だがここは、とあるゲームのファンとしてやっておきたいのだ!
 当然、こんなものでは再現も満足できないので……それを上げていく。

「──“神持祈祷:サウザンドエッジ”、そして『インストール:リビングドール』」

 千の刃を生成する『プログレス』、そして無機物を操る『プログレス』を借り受ける。
 それらを(刃虎の加護)で制御し、飛んでくる武器にぶつけていく。

「そう、これですよこれ! さぁ、【仙王】さん、もっと楽しませてください!」

「え、ええ……なんか、楽しんでない?」

「ええ!」

 とりあえず、この戦闘は『SEBAS』が録画してくれているだろう。
 うん、あとで一部は編集して、家族で観ようじゃないか!


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