虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
WITH仙王 その17
結局、カルルの力を借りて『餓晶髑髏』をどうにかしてもらった。
そうでもしなければ、山の中の水晶を根こそぎ消費させられるからな。
「──といったわけでして。まさか、私もあのような魔物が現れるとは思っていませんでした。もし、水晶が失われれば、この迷宮と山にどういった影響があるのか分かりませんので……先んじて、手を打ちました」
「……事情は初代様より移動中に窺った。推測通り、かなり危険な状態だったようだ」
答え合わせを『闘仙』とすれば、それなりに当たってしまっていたらしい。
そう、仙郷の山にある迷宮『通天の晶洞』の運用には水晶が用いられていた。
それが無くても問題は無いのだが、仙丹溢れる仙郷の環境維持、そして迷宮の管理者である初代【仙王】の細やかな欲を満たすにはそれなりに必要だ。
今回、ごっそりとそんなエネルギー──通称DPを蓄えるための水晶が食われた。
補填は初代【仙王】がなんとかするだろうが……しばらくは、辛いだろうな。
──さて、そんな会話をしている俺たちだが、現在地点は最下層付近だ。
「しかし、最後の個体がまだ残っている。どうにか王が防いでいるが……あまり、相性が良くなくてな」
「それは、仙術がということですか? それとも、仙丹を使った攻撃が、ということですか?」
「後者だ。ゆえに物理しか使えぬ俺より、王の方に足止めを任せたのだ」
「なるほど……分かりました。ですが、意外と戦えているかもしれませんよ?」
仙丹を介した攻撃に高い耐性を持つ魔物。
そりゃあ倒すのに時間は掛かるだろうし、『闘仙』の方が倒しづらいというのならば、霊体とか物理にも強いのだろう。
しかし、【仙王】がただ時間を稼いでいるだけというのもあまり想像できない。
彼女のことだ、倒せるのであれば倒してしまう……ぐらいのノリだろうな。
◆ □ ◆ □ ◆
──魔物の名は『邪仙霊』。
その名の通り、邪に堕ちた仙人の霊が魔物化した存在だ。
故に仙丹関連の事象に耐性を持つし、霊体なので物理を無効化することもできる。
「…………これは」
「やはり、こうなっていましたか」
「げっ、ロー……それにツクルも」
「とても充実した時間を過ごせたようで」
最下層、それも核の置かれた部屋直前。
そこまで侵入していた『邪仙霊』だったのだが、今やその姿は見るも無残に。
霊体に干渉できる縄で縛られ、投げ捨てられたまま放置。
対する【仙王】は周囲に娯楽品を並べ、完全にリラックスモードだった。
「……覚悟はできているんだろうな」
「くっ、あたしは負けない! 今こそ、真の力を発揮するとき!」
「…………なんと台無しな言葉を」
ともあれ、これがこの騒動の最後の戦いになるのだろう。
勝った方が正義、お仕置きを掛けた勝負が幕を開いた。
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