虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
WITH仙王 その15
理論上、最強に成り得る要素を詰め込んだ存在──それこそが『終従人形』。
材料が材料なだけに量産不可能、というか創ろうにもまったく別物になる。
そんなオンリーワンなエクリによって、下層に現れた脅威は弱体化させられた。
あとは間に合った『闘仙』に任せ、そのまま駆除までしてもらう。
「──ただいま戻りました」
「お疲れ、エクリ。それで、収穫の方はどうだったんだ?」
「はい。間近で見ることができましたので。今後は、それも踏まえての戦術を織り込むことができそうです」
「そりゃあ良かった。まあ、向こうには事情も話して、協力してもらうってのもありかもしれないな」
帰還したエクリを労いながら、今回得た物について話す。
素材などは向こうだろうけど、目に見えない収穫はバッチリだ。
戦闘データ、経験値、そして──。
いやまあ、ある意味こちらの世界であれば可視化できるけども……ともあれ、非常に多くのモノを得られた。
「『SEBAS』、現状は?」
《終息に近づいています。しかし、最後に再びリストに在った個体が出現する可能性が高いでしょう》
「問題は、それがどこに現れるかだな……ここならいいんだけ──ど」
《さすがは旦那様です》
何を褒められたのやら……運の無さかな?
迷宮の中から現れていた有象無象と違い、ソレは山という外殻そのものを無理やり抉じ開けて現れた。
巨人をも見下ろすほどの巨体、白く透き通る各部品──文字通り空虚な瞳。
体であって、肉体ではない……彼の者に肉は付いていないから。
「『餓晶髑髏』……怨念の代わりに、水晶を喰らって成長する特殊個体。出てほしくない個体の中でも、一番の奴が出てきたな」
イメージ的には、妖怪の餓者髑髏の骨を全部水晶に置換した感じだ。
クリスタルなスケルトンカラーは、なんとも高級感が……って、そうじゃないな。
「ここは『通天の晶洞』だぞ。どんだけの被害が出ると思ってやがる」
水晶があれば再生もするし、自分の分体も生み出すことができる。
場所が場所なだけに、至る所で生成されること間違いなし。
迷宮の悪辣さがなんとも思いやられる。
ともあれ、すぐに人形経由で各場所にこちらの映像を送っておく。
「敵は『餓晶髑髏』。入り口の本体を断たない限り、無尽蔵に分体が湧いてきます。適切な対応をお願いします」
まあ、止まる方法はもう一個あるが。
当然、生み出すために必要な水晶が無くなれば身を切って作らなければならなくなる。
……が、それをすると迷宮の方に深刻な影響が出るからな。
可能な限り、早急な討伐が必要なことに変わりないのである。
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