虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

WITH仙王 その11



「マスター、お呼びいただき光栄です」

「カエン……そんなに堅苦しくなくてもいいぞ。マスターではあるが、それと同じくらいアイスプルの一員なんだからな」

「いえ、これは私がゴーレムであることを忘れない、その意思表明のようなものです。いついかなる時も、マスターのご命令とあらば馳せ参じましょう」

「お、おう……」

 カエンは俺が錬金術で生み出した、いわゆるゴーレム。
 しかし、アイスプルで創ったからか、通常よりも遥かに知性溢れる個体となった。

 そんなカエンも、立派に『プログレス』を使うことができる。
 いち生命体として、しっかりと個を確立しているわけだ。

「えっと……二人は、何をしているんだ?」

「創者様。迷宮から溢れ出る魔物は、まだ協力ではない様子」
「弱肉強食。現状において、当機らの出番ではない模様」

「じゃあ、今やっているのは?」

「「──戦力分析」です」

 ユニーク種の特典を核とし創り上げたオンリーワンな人形エクリと、元は『機械皇』から貰った機体である銀花。

 二人は周囲に機材を並べて、森の民と迷宮の魔物との戦闘を撮影している。
 ……本当に純粋度100%で、それは戦力分析なのだろうか。

「まあ、森の民が飽きる、もしくは対処できなくなったら変わってやってくれ」

「畏まりました」
「委細承知」

「さて、あとはっと……カルルはエンキを見ていてくれたんだな」

 元【魔王】四天王の一人であり、今は対外的に俺の奴隷となっている幻霧のカルル。
 今ではすっかり馴染んだ彼女が相手にする存在こそ、アイスプルの守護獣エンキ。

ツック・・・……」

「エンキは……うん、元気そうだな。カルルも、これから迷宮産とはいえ魔物を倒してもらうことになるが……問題ないか?」

「今さらだよ。それに、【魔王】様もツックに可能な限り協力するよう命じてくれたし、何でもやるよ」

「はいはい、そんなツンツンしなくてもいいぞ。エンキはほら、嬉しそうだしな」

「──クキュッ!」

 ややクール然とした振る舞いをする少女ではあったが、その手は決してエンキを撫でることを止めていなかった。

 だからこそ、エンキも嫌がるそぶり一つせずに目を閉じて感触を味わっている。
 環境に流されていたとはいえ、根はとってもいい子だとアイスプルの民は知っていた。

「二人とも、合図が来たら張り切って魔物討伐をしてくれよ」

「分かった」
「キュッ!」

 エンキもカルルに懐いているし、いっしょに戦ってもらうとしよう。
 これで問題は無い……はずだが、今回問題になるのは、ここじゃないんだろうな。


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