虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

WITH仙王 その10



 そんなこんなで、迷宮の入り口における防衛戦はアイスプルの住民たちと共に行うことになった……森の民(魔物)の有志、そして個人で住まう者たちと共にだ。

 風兎に連絡は済ませてもらい、あとは召喚するだけ。
 ……魔物たちに関しては、強すぎるのでいろいろと抑えてもらいたいがな。

「ところで『SEBAS』、減らした分だけ来るんだろう? 負担にはならないし、別にいいんだけども」

《指定した者たちだけでも、充分に対処可能です。今回は縁寄の戦闘経験を積む、ということでしたので、段階ごとに強さを上げておきました》

 そう、『SEBAS』の操作はあくまでも出現場所を弄っただけ。
 それ以上は初代【仙王】にバレるし、悪影響が出かねない。

 というわけで、実は入り口辺りに調整した分が出現するようにしてもらっていた。
 どうせ、ドローンや機兵を使えばすぐに処理できたのだ、増えても大差は無いのだ

「──というわけで、まずは召喚!」

《転送開始──完了しました》

 そんなこんなで、この地にやって来たアイスプルの住民たち。
 キョロキョロする森の民たちを、風兎が小さな体で落ち着かせている姿にホッとする。

 まあ、もし『星域』を使ってなかったらそうは言ってられなかっただろうけど。
 冒険世界、というより多くの休人が活動している世界共通の問題があるからだ。

 ユニークモンスターとのエンカウント時、休人にはそれらがアナウンスとして通知される……もうお分かりだろう、この場にはそんな希少な存在が溢れ返っている。

 そんなこんなで、この地は今、休人がもっとも来たいであろう場所になっていた。
 俺は彼らを導くため、まずはスピーカー型の魔道具を取り出す。

「──あーあー、全員注目」

『!』

「これからそっちの洞窟から、弱い魔物が順に出てきます。迷宮の魔物なので、会話はできません。最初の方は弱いので、参加する数は減らしてくださいね。みんな、グループになってくださーい!」

 聞く人が聞けば悪魔の台詞にも思えるこの発言だが、森の民たちは風兎が的確にグループ決めをするためまったく問題ない。

 指名組に関しても、彼女たちだけで組んでもらえばいいので困らないのだ。
 そうして戦う者たちも決まり、準備もできたので──『SEBAS』に指示をする。

「それじゃあ、始めようか」

《畏まりました──結界を解除します》

 すでに発生していた魔物だが、結界で妨害することで移動を塞いでいた。
 それを外せば、当然魔物たちは溢れ出てくるわけで──さぁ、開戦だ。


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