虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
WITH仙王 その07
通天の晶洞 上層
煉丹術の真似事をして、大量に生成した仙丹グッズ(仙人関係者以外使用不可)を持ち込み、迷宮へ入った。
山岳部、地表、地底の三つに分けられる区画のうち、現在位置は上の辺り。
俺の居る山岳部に近いエリア──上層は、比較的弱い魔物たちが出現する区画だ。
ただし、階層守護者は例外。
侵入者が来た際でも対応できるよう、それなりに強力な奴が配置されていた……なお、仙人関係者は襲わないよう設定されている。
だが今回、そんな制限も解除されて守護者が牙を剥く──なんてことは許されず、すでに討伐済み。
復活まで休憩地点に最適なので、各階層ごとに若い仙人関係者たちが配置され、そこで魔物の駆除を務めることになっている。
「事情は先に伝えてもらっているから、人形でいいんだったな。『SEBAS』、操作の方は任せたぞ」
《畏まりました》
仙丹グッズに関しては、『SEBAS』が操作をする人形が適時配布する予定だ。
必要になればドローンを飛ばし、緊急時には蘇生薬も盛大に振る舞うぞ。
「さて、中層にも同じ感じで配置をしておくとして……最下層まで一気に行くか」
《では、迷宮内転移を実行します》
迷宮は一種の異空間のため、外部から特定の座標への転移ができない。
なので一度上層から入ったうえで、再度転移をする……といった流れが必要だ。
加えて言うと、管理者の許可が無いと簡単な方法ではできないのだがな。
そちらはあるのだが、迷宮が荒れているせいで外部から直接ができない。
もちろん、『SEBAS』ならばそういった問題すべてをクリアできる。
できるにはできるが……うん、まあ今回は勉強料ってことで。
◆ □ ◆ □ ◆
最下層
中層、下層への人形の配置は転送ということで簡単にできた。
そう、それは体内に魔力を持たない生物ではない存在だからこそ、である。
つまり、生物は転移ができない……わけではなく、失敗すると体が千切れたりする。
逆に言うと、それでも座標への到達自体はできるわけで……うん、そういうことだ。
「ひっ……! つ、ツクル、いくら大胆な登場がしたいからって、それは……」
「なるほど、これが失敗例なのか」
引いている【仙王】と『闘仙』が目にしているのは、体が拉げた俺の体。
転移先であることを示す演出が、俺が来ることを教えたのだろう。
だからこそ、こちらを見ていた二人には悪いことをしてしまった。
意識して死に戻りを選べば、体は再構築されて綺麗な状態へ戻る。
対迷宮戦用に、少ししぶとく生き残る仕様にしていたからな。
そうでも無かったら、普通に姿を出せたのだが……完全に自業自得だった。
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