虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

WITH仙王 その05



 ──通天の晶洞。

 仙郷へ向かうために使うルートの一つ。
 山頂にある仙郷よりも下は、そのすべてが迷宮であるそこと繋がっていた。

 自然に発生した迷宮ではなく、そこは初代【仙王】の霊体が管理を行っている。
 基本的には仙郷へ向かう登山ルート、そして攻略を目指す地下ルートに分かれていた。

 今回問題になっているのは、半分より下。
 つまりは迷宮攻略を目的とした地下ルートの方である。

 迷宮の活動が活発的となり、大量の魔物が地下から地上へ進出しようとしていた。
 まあ、大半はそのままその中間である入り口から出ていくので仙郷に影響は無い。

 それでも、内部が荒らさるのは登山ルートにも影響が出てしまうため、処理は可能な限り早い方が良いとのこと。

「──具体的に、どういった問題が?」

「活性化中は制御ができず、かなり強力な個体が現れるそうだ。無論、一体ずつであれば容易いが……問題は数だな」

「私も活発化に似た現象に遭遇したことがありますが、たしかに数も質もどちらも異様でしたね。それで、当初の予定はどういったものだったのでしょうか?」

「精鋭を向かわせ、ゆっくりと済ませる予定だった。俺や王が動こうと、それでも活発化の影響すべてを防げるとは思わんがな。一部は外へ出そうと思っていたが……『生者』が居れば、それも防げそうだな」

 当然、山へ出せばかつて侵攻して来た国にも魔物が向かっていただろう。
 それはある意味、戦争の火種をこちら側が用意するということ。

 脅しはしたものの、『プログレス』もだいぶ普及しているからな……。
 力の底上げが済み、今回の騒動で魔石を大量に手に入れれば……無くは無いだろう。

「分かりました。間引き、でしたね。私は入り口の方まで辿り着いた魔物の処理、それと皆さんのバックアップを行います。それ以上は、この地の皆さんが行うこと……ということでよろしいでしょうか?」

「構わん。むしろ、その方が良いだろう。お前が居ると、王も気を抜いてしまうだろうからな」

「? まあ、ではそういうことで。では、少し工房をお貸ししていただけますか? 必要な分の魔法薬を確保しますので」

「承知した。俺の権限で材料の方も、こちらで提供しよう」

 ここの素材は煉丹にも使えるかなりレアな素材ばかりなので、蘇生薬も万能薬もそれなりに作れるだろう。

 他にも仙丹用の回復ポーションを作っておけば、仙術も使いたい放題だ。
 煉丹術を直接使えない俺だが、魔道具経由でならいちおうできる。

 さて、さっさと完成させて、間引きができるようにしますか。


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