虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

WITH仙王 その04



 怠けっぷりの果てに、部屋を人質ならぬ物質に取っていた【仙王】。
 しかし、俺の構築した非殺傷結界により、それらは意味を成さなくなった。

 なので現在、『闘仙』によるしごきが強制的に行われている。
 だらけていても才覚は本物、次々と高位の仙術を放って迎撃を行っていた。

「仙術って、本当は自然が無いと使えない分火力が高いよな……」

 仙丹というエネルギーを使う仙術は、性能が高い代わりにそんな制限がある。
 いかにそれらが豊富な仙郷であろうと、そう何度も連発することはできない。

 だが、【仙王】は予めそれを自身の『ゲートコネクター』に溜めることで可能にした。
 もちろん、燃料が在っても出力できなければ意味が無い……そこは才能次第だな。

「その点、【仙王】は生まれ持っての天才。あればあるだけ、その力を十二分に発揮できるんだろう」

 今なお、大地を穿ったり暴風を生み出したりと、『闘仙』を退かせるべく強力な仙術を放っている。

 しかし、そのすべてを『闘仙』はほぼ武芸のみで打ち砕く。
 大地を割り、天を割き、森羅万象を体の動きの延長線上で破壊している。

「成長したな、ワン。ならば、もう少し本気を出しても良いだろうな」

「っ……!? じょ、冗談でしょ?」

「面白いことを言うな。俺がこういうとき、嘘を吐くとでも?」

「あ、あははは……殺される!!」

 突然、『闘仙』の足元に蜘蛛の巣状の罅が広がっていく。
 たぶん、重力場でも発生させたのか……しかしまあ、平然と前に進み出ている。

 元より、『闘仙』は普通の仙術が使えない代わりに武闘派な仙術を編み出した男。
 重力だってなんのその、循環させた仙丹で肉体を強化して耐えているのだろう。

「さて、もう抵抗は済んだか──ならば、仕置きの時間だ」

「ぎゃ~~~!!」

 そんなこんなで、結局お仕置きからは逃げられなかったようで。
 俺もリーシーも、ただその光景も見ていることしかできなかった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 無残にも力尽きた【仙王】が転がされている中、俺に話しかけてくる『闘仙』。
 ……何やら深刻そうな表情なので、問題を抱えているのだろう。

「──ちょうどいい機会だ。『生者』、少し手伝ってもらいたいことがある」

「それは構いませんが……もしや、山の迷宮と何か関係が?」

「……察しが良くと話が早いな。その通り、実は初代様より迷宮が活発になっているとの言を聞いた。流れを止めることはできず、むしろ止めた方が事態は悪化するとのこと」

「そうでしょう。弁を締めれば時間は稼げますが、最後に破裂した際の勢いはより苛烈なモノとなります。つまり、私には間引きをしてもらいたいと?」

 コクリと頷く『闘仙』。
 実はここに来たとき、『SEBAS』が教えてくれていたからな……うん、俺自身は全然分かっていませんでした。

 あの迷宮は情報をコピーしたので、正直旨味は無いが……うん、日頃お世話になっているわけだし、お手伝いするとしますか。


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