虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

WITH仙王 その01



 N3E10

 錬産術は『錬金王』に任せた。
 俺も『SEBAS』に委ねたが、そればかりを使うという予定は無い。

 俺の持つ優位性は、さまざまな技術を体現できること。
 どれか一つを使えなくなっても、それ以上の手段でごり押しをする。

 なのでとりあえずは基礎だけで充分、それ以上のことは専門家に任せておく。

「──いつもいつも、お出迎えありがとうございます」

「いえ、それが私の使命ですので」

 キリッした顔で語る、中華系ウサ耳少女。
 そんな彼女の視線は、まるで何かを求めているようで……まあ、こっちもいつもの流れだからな。

「残念ながら、いつもの品はございません」

「っ……!?」

「……ですが、最近開発に成功した品を。よろしければ、ご感想をお聞かせ願えないか、と思いましてね」

「っ…………!!」

 テンションの高低が耳で分かる、そんなウサ耳従者のリーシー。
 アイスプル産の人参も、絶えることなく進化を繰り返しているのだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 なんてからかいをしてから、俺はいつものように【仙王】と『闘仙』の下を訪れた。
 事前に連絡したので、公務も修練もせずに待っていてくれたようだ。

 ただ、玉座の間に居たのは【仙王】のみ。
 どうやら『闘仙』は、地下に居るかつての【仙王】の所へ行っているらしい。

「いらっしゃーい、『生者』。今回はどんな用事なのかな?」

「いろいろと試していることがありまして。つきましては、皆さんにもご協力をお願いしたく……あっ、こちらはつまらないものですが。アイスプル産、最高級フルーツの詰め合わせです」

「……ふっふっふ、お主も悪よのぅ」

「いえいえ、【仙王】様ほどでは」

 二人でお代官ごっこをしながら、改めてどういったことを頼むのか考えてみる。
 ……そう、アポを取ってから今の今まで、何を頼むのか決めていなかったのだ。

 本気で頼み込めば、仙人たちも駆り出して頼みごとを聞いてもらうことも可能だろう。
 だが、そもそも何をしてもらえばいいのかすら、今はさっぱりである。

 そんな中、ふと思い出した最近の出来事。
 俺に友好的で、かつ『プログレス』を持つ特殊な人々……調査のし甲斐があるな。

「……『プログレス』には、WITHシステムというものがありまして。今回、【仙王】様とリーシーさんに試していただきたい」

「へー、そんなものがあったんだ」

「擬似的な幻影のようなものですが、意思を持って皆さんのサポートをすることもできますよ。物理的な干渉はできませんが、能力に関することであれば問題ありません」

「うん、面白そう! じゃあ、やり方を教えてよ!」

 そんなこんなで、WITHシステムを導入した二人。
 ……さて、『闘仙』が帰ってきたら、どういった反応をするのやら。


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