虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
錬産術 前篇
??? 『錬金王』のアトリエ
亜空間に繋がる転移装置からやって来たのは、冒険世界でもっとも優れた錬金術師が住まう施設。
現『錬金王』である人造人間、そしてその創造者である前『錬金王』が住んでいる。
「……久しぶりに顔を出したな。いや、活躍は聞いている。闘技大会での優勝、おめでとうと言ったところか?」
「おめでとうございます、『生者』さん!」
「ありがとうございます。それでしたら、話は早い。実は、『錬金王』さんにご相談したいことがありましてね」
「……ほぉ。『生者』の相談事となると、とても面白いことなんだろうな」
割と情報を集めているらしい『錬金王』に語るのは、そんな闘技大会のある場面。
赤色の休人が行った、『複合錬金』やその他の錬金技術についてだ。
「他にも魔道錬金と調合錬金を耳にしましたが、そういった技術はこの世界には存在してません。使い手自身も、生産世界の職人が生み出したと言っておりました」
「……そんな技術だと分かったうえで、ここに来たわけだな」
「ええ、ある程度術式については解析を済ませてあります。同じ錬金術師の極致に居る貴女様であれば、再現以上のことを成すのも容易いのでは?」
「なるほどな、つまりこれは生産世界と冒険世界、どちらの錬金技術が優れているか……という話になるのか。いいだろう、その話に乗ってやろう!」
どうやら『錬金王』の興味を上手くそそれたようで、やる気になってくれたらしい。
ユリルは頭を抱えているが……すまない、後で美味しいデザートをあげるからさ。
「まずは術式の分解、それとどういった仕組みかを解析する必要があるな」
「そうですね。複合錬金と二つの錬金から、そちらの差異だけは判明させています。ですが……」
「そうだな。それ以外の未知の錬金を可能にするのであれば、まったく別の術式を編み出す必要があるだろう。くっ……どうしてもっと早く来なかったのだ!」
「申し訳ありません。少し前まで、鬼に頭を握り潰されておりましたので」
軽い死亡ジョークを挟みながら、解析のための準備を整えていく。
そんな俺と『錬金王』の姿は、どうやらユリル的に微笑ましかったようで……。
「おや、ユリルさん。何か面白いことでもありましたか?」
「い、いえ、そういうわけでは……ただ、師匠様と『生者』さんがそうしている光景は、とても久しぶりでしたので……」
「『運天の改華』以来だったな……まあ、それとは別にせっかくだ、何か手伝いでもしてもらうとしよう。問題はあるか?」
「いえ、当代の『錬金王』の御業、ぜひとも拝見させていただきたく」
今の『錬金王』はユリルその人。
ちょうどいい機会だし、正当な錬金術の使い手にもいろいろとやってもらおうか。
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