虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

WITHシステム 中篇



 冒険世界 始まりの街

 改めて、WITHシステムの普及具合を観察してみることに。
 街中で時たま見かける、従魔を侍らせる者たち……その一部が『プログレス』だった。

「あー、本当だったんだな」

《物理的な干渉力が無いので、基本的には無害であると判定されております。証明の証を身に付けていれば、従魔同様に街中で晒していても問題ないようです》

「……ん? 基本的には、だと?」

《職業能力や魔法との組み合わせによって、感覚共有などが可能ですので。透過は元よりできませんが、それでも覗きやいかさま目的で利用されることを想定しております》

 これはもともと、従魔でも上がっていた問題らしいので、そこまで法を改定しなくても済んだらしい。

 特別な資格を国から認められた者に限り、表向きは使用が許されるとのこと。
 ……もちろん、世の中にはバレなきゃセーフというグレーな部分もあるからな。

「人型、動物型は分かりやすいな。まあ、俺と『SEBAS』にとっては……だけど」

《識別用のプログラムを加えましたが、具合は宜しいでしょうか?》

「そうだな……空間型のアレ、あれはあそこまでくっきり見えない方がいいかもな」

《──畏まりました》

 休人は、生物の頭上に浮かんだマーカーで原人か休人かを見極めることができる。
 今回、『SEBAS』が俺の装備するサングラスにその『プログレス』版を追加した。

 WITHシステムは『SEBAS』が編んだプログラムなので、そういった調整をするのも簡単らしい……のだが、視界いっぱいに表示されるのはやはり問題だ。

 空間型の『プログレス』。
 オーラを纏うタイプか、一定領域内を探知するタイプなのだろう……広げられたその空気のようなものを俺は可視化している。

「いつの間にか俺の死因が増えていたの、もしかして……ああいうのが原因か?」

《結界の防御対象外に設定されていれば、その可能性が高いかもしれません》

「……まあ、日差しと声と魔力ぐらいだからな。あとは人並みの耐久度になるよう調整しておいたはずだから、ああいう未知の干渉でもないと死なないはずだし」

 意図せぬ限り、意味もなく死なないようにしているのだ。
 それでも死ぬということは、想定していない事態が起きたというだけのこと。

 その正体も今回の件で、なんとなくではあるが察することができた。
 ……空間型は基本的に、不可視だからどうしようもないんだよな。

「あとはそうだな、人や動物、空間……まあそういう表に出すものに適性が無かった奴がどうなっているかだな。空間もだけど、表に出した際の影響って何なんだ?」

 一度浮かんだ疑問に派生するように、また異なる質問を閃いてしまう。
 そういったことに、『SEBAS』は丁寧に答えてくれる……毎度毎度、助かります。


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