虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

WITHシステム 前篇



 ──WITHシステム。

 それは、『プログレス』に擬似的な体を与え得るプログラム。
 適性を持つ使用者、及び能力であればそれに合わせた姿として顕現する。

 休人には、人型や空間型などがあると別々のプログラムとして提供し、適正が無ければ失敗する……という形にしてはいるが、実際のところは本人の深層心理に適合していた。

 原人用の拡張プログラムの場合、判定によりランダムで決まると記してある。
 元より、自分に適した形で出力されるはずなので、問題は無い……と思う。

 なお、生み出される存在に物理的な干渉力は無い。
 あくまでも、『プログレス』をより近しい存在として感じるためのものだ。

「……すっかり忘れていたけど、あれの普及率はどれくらいだ?」

《休人のダウンロード率が八割、原人が一割でした。通達をしていない以上、後者に関しては致し方ないかと》

「まあ、そっちは仕方ないとして。休人が八割かぁ。思ったより多かったというか」

 俺としては、美少女を求める男たちによって一気に普及すると思われたシステム。
 しかし、十割はまだまだ先……システム利用を望まない者も居るのだろう。

「利用者からの声は?」

《『思っていたヤツと違う』、『マジ美少女じゃん』、『いい……んだけど、妙に見覚えがある』などの声が上がっております。最後の意見は、母親に強いコンプレックスを抱く者の感想です》

「……そりゃあ見覚えもあるよな、マザコンの理想を体現しているわけだし」

 賛否両論あるようだが、俺としては否定の方が多くなければそれでよい。
 そもそも、暇潰しや成長促進の目的で流通させただけで、必要不可欠では無いからな。

 まったく存在しない概念を、人は想像しがたい。
 なので少しでも可能性を提示し、それを自ら想起できるように……という目的だ。

「能力的な面に関しては?」

《対人に特化した攻撃能力、また封印能力などが出現しました。それらは共に、人型ではないWITHシステムにしか適性の無かった休人が発現させております》

「……後者は危険っぽいな。いちおう、各国へそれとなく情報を回しておいてくれ」

《畏まりました》

 過去、存在した危険な職業に関して国はそれぞれ情報を伝承している。
 その中には、『超越者』の情報も当然あるわけだが……『プログレス』はまだ未知。

 なので、『ベストペスト』や今回発現した能力など、危険な能力は事前に根回し済み。
 対策をするのは国にお任せ……利用するのであれば、それなりの制裁をな。

 なんせ、管理者権限は俺と『SEBAS』にしかない。
 女神プログレス、そして創造神様もいちおうは俺たちを介する必要があった。

 もちろん、創造神様から指示があればその通りにするけども。
 ……:DIY:の恩は、こちらにおいて一生を掛けて支払うものだからな。


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