虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

物ノ怪本家 その07



 空間系の能力による脱出は、コミの母親である朱音によって無効化されている。
 そして、物理的な脱出も父親である侵羅童子によって困難なものとなっていた。

 頭を握り潰され、地面に着地した俺。
 脱出は今なお諦めない……煙玉を床に叩きつけ、行動に移る。

「──『モールクロー』“アースプール”」

「ア゛ァ?」

「これにて、失礼──“アースクロー”」

「邪魔だ、クソが!」

 瞬時に『SEBAS』が[称号]を、毎度お馴染みな『人間爆弾』に変更。
 生えてきた特殊な材質の爪を体に差し込むと、体が破裂して床の一部が砕ける。

 そこから地面に入水ならぬ入地。
 しばらく下へ下へと行っていたが──突如強い衝撃に襲われる。

「……カハッ!」

「逃がさねぇよ。楽になりてぇなら、まず出すもんを出せ」

「こ、れは……凄まじいですね」

 地面の中は真っ暗だったが、それがいきなり明るくなっていた。
 何より、周囲が真っ新になっており、俺の居る場所がクレーターと化している。

 何らかの形で地中の俺を見つけ出し、引っ張り出すために選んだ手段。
 まさかそれが、それ以外全部をぶち壊して抉りだすことだとは……暴力的だな。

「──『メタルスライム』」

「体を固くしても無駄だ!」

「“神持祈祷:グランドマロット”──“千変宝珠”」

 体を流体金属に置換し、そのうえで新たな『プログレス』の杖を祈って用意。
 そして、『騎士王』が創り上げた何にでもなれる魔力の球を生成する。

 なお、『グランドマロット』の効果が発動するのは魔法限定。
 故に魔術では効果を発揮しない……まあ、これから思いっきり使うけど。

《『SEBAS』、肉体操作を任せた》

《畏まりました》

「では、ここからは戦いで勝ち取りますよ」

「できるものなら……なんだ、その動き」

 結界が体を弾き、行われる最適な動き。
 杖、そして魔力球から変化させたさまざまな武器を用いて攻撃を行う。

 武人のような者たちは、相手の筋肉やら視線やらで動きを先読みするらしいが……俺の場合はそれらをいっさい読み取れないので、さぞ気持ち悪く感じているはずだ。

「──“極小土ミニマムソイル”」

「その程度……無駄だっての!」

 土を少量を生み出し、そのうえで生み出した天を貫く柱。
 その上に乗って距離を取ろうとしたが、根元から圧し折られてあえなく失敗。

 取られた距離もすぐに詰めるよう、跳躍して掴んだ俺を地面に投げつける。
 対する俺はスライムの体を利用し、衝撃を無効化して無事に着地。

「魔法は無駄ですか──“神持祈祷:ダメージイーブン”」

 痛み分けの『プログレス』。
 これがあれば、最終的には勝てる…………長い戦いになりそうだ。


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