怪ノ物騒動 その10

　さて、しばらくはここで世話になることになったツクルです。
　……いろいろ事情があるのだが、一番の理由は──待機命令が出たから。

「父上と母上、それに『百鬼夜行』衆までもが……申し訳ないのじゃ」

「いや、コミが謝ることじゃないさ。いずれは起きていたことだろうし……むしろ、これまで隠してきてくれたんだろう？　だから気にしなくていい」

「むぅ……それでも、謝りたいのじゃ」

　コミの父と母、それは物ノ怪たちの中でも上位の存在。
　彼らは囮にしたはずの隠れ里が、迎撃に成功したことを察知していた。

　まあ、陰陽師たちが式神を使うように、何らかの手段で覗き見ていたのだろう。
　だからこそ、コミのやろうとしていることも全部把握済み。

　そしてそれに協力している、怪しい輩に関しても今回の件で知った。
　詳細を知る、もしくは何らかの脅しをするために……俺を呼ぶのだろう。

「まあ、むしろこれはチャンスだぞ」

「……チャンス？」

「俺がそっちに行けば、少なくともコミの身の安全は絶対のものだ。この命に賭けて、守り抜いてみせよう」

「…………ツクルの命は安いからのう。どれだけあっても足りないではないか」

　うん、俺もこの・・命じゃ無理な気がする。
　表現としては間違っているが、これらの・・・・命の方がいいのかもしれない……うん、それでも足りないよな。

「千苦は……来るのか？」

「いや、呼ばれたのは狐魅童子様と貴様だけだ。それ以上の者は……入ることすら許されていない」

「そりゃあ残念だな。千苦が居てくれれば、いろいろと任せられたのにな……」

「……狐魅童子様の傍にお仕えできないことは不服だが、それ以上に貴様に利用されることなどお断りだ」

　実際問題、居るか居ないかでコミの安全面は格段に違っていた。
　命だけは絶対に保障できたが、これではある程度の準備が必要になってしまう。

「コミ、これだけは聞いておくぞ。この話、上手く纏められる自信は？」

「……正直に言うと、難しいのじゃ。じゃがそれでも、やりたい。私を信じてくれた者のためにも、過去の因果を打ち砕く！」

「うん、いい覚悟だ。なら、俺もそれに応えてやらないとな。少なくとも、何もしないまま否定ばかりしている連中よりは、コミの方が魅力的なアイデアだからな」

「助力、感謝するのじゃツクル。必ずや、それに応えてみせよう！」

　覚悟だけで解決するわけじゃないが、それでもやる意思は重要である。
　問題は、それを考えずに否定ばかりする者たち……そこはやはり、手伝わないとな。