虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

怪ノ物騒動 その06



「──“神持祈祷:フラッグフラグ”」

 地下に潜む【革命英雄】の『プログレス』の力を、女神に助力を願い借り入れる。
 運命操作能力を秘めたその旗を靡かせ、戦場を駆け巡っていく。

「これでしばらくは何事も上手くいく。騙されたと思ってやってみてくれ」

「……よく分からんが、それが貴様だった。いいだろう──『カースドアーマー』!」

 俺の言葉に応えるべく、『プログレス』の能力を活性化させる千苦。
 現在、彼は自身の能力を活用すべく、大量の状態異常をあえて背負っている。

 毒を、麻痺を、盲目を……千の苦しみすらも乗り越えた彼には生温いハンデ。
 その一部が、千苦に触れた相手に感染していく……その瞬間に地に伏せる者もいた。

「これは……なるほど、たしかに効きが良くなったようだ」

「そりゃあ良かった──ほら、ポーションを浴びろ」

「何をする! これでは能力が──」

「……耐性でも発動するだろ。わざと掛かったままより、今だけは完全な状態で暴れろ」

 掛けたのはあらゆる状態異常を癒す、文字通り万能薬を千苦に振る舞う。
 自分に掛かった状態異常が癒えた分、能力の成功率は下がる。

 だがそれ以上に、千苦が十全な力を振るえる方が継続的な戦闘を行えるだろう。
 下がったはずの成功率も──旗の下で戦う今ならば関係ない。

「千苦、やっちまえ」

「ふんっ……礼は言わぬぞ」

「礼ならコミにな。無茶する奴には万能薬をぶっかけろ、これも依頼に含まれてるんだ」

「…………そうか」

 実際、これは言われていたことだ。
 どいつもこいつも、コミのためならば死すら厭わないからな……俺も最悪、蘇生薬を使うつもりだし。

「まあ、今は俺がこの旗を振っておくから。好きなように暴れればいい」

「──“ブラックブラッド”」

 千苦が新たに発動させたのは、血を浴びれば浴びるほど強化される能力。
 触媒はすでに戦場中で生まれている、それらすべてが千苦の糧となった。

 そして、これは『カースドアーマー』全般の強化にも使われる。
 感染度も悪化度合いも、血を伝うことでさらに酷くなっていく。

「じゃあ、俺も行きますか」

 旗を振り回すからといって、戦えないわけじゃない。
 ただ、旗を槍状にして使える“スパイラルフラグ”は無理だろう。

「『SEBAS』、頼む」

《畏まりました。『バトルラーニング』用のプログラムを応用し、結界を動かします》

 旗を構成する棒と布、それらは世界に存在しない謎物質。
 性質は似ていようと、それらは武器に使えるほどに頑丈──にすることもできる。

 自前の魔力を通すと、旗は能力を発動しておらずとも硬質化していく。
 あとはそれを自在に振り回し、暴れてるだけだ──もちろん、情報収集も兼ねてな。


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