虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

怪ノ物騒動 その05



 物ノ怪VS怪ノ物の戦いは、質と量のぶつかり合いだ。
 隠れ里の、それも戦える者しか前に出てこない物ノ怪と軍で仕掛けて来ている怪ノ物。

 その圧倒的な物量差を覆す鍵──それは、全員が身に着けている『プログレス』。
 配布をしてからそれなりの期間が経過しており、能力の発現も済んでいる。

 集団として統一化された能力ではないが、個々でそれぞれ特殊な力を使う。
 補正もあり、物ノ怪たちは怪ノ物たちを相手に無双している。

「ツクルよ、現況はどうなっておる?」

「コミか、解析はもう始まっているぞ。今の段階で三割といったところだな」

「三割……まだ掛かるのか」

「それだけ大きなことをやろうとしているってことだ。ここは千苦たちの部隊を信じて、委ねるしかない」

 俺が発動している『ベストペスト』。
 細菌を生み出し、操るこの能力によって争いを鎮める……コミの提案を受け入れ、選んだのがこのやり方。

 ──怪ノ物にだけ効く細菌をばら撒き、強制的に鎮圧する。

 先んじていろいろやっていたが、先ほどの最終勧告を拒否されたが故の選択。
 今なお解析は進んでおり、一気に怪ノ物たちを鎮圧するだけの細菌が生成される。

「……これ以上は、ここからだと難しいな」

「ツクル、くのか?」

「速ければ速い方がいいんだろう? まあ、準備の方はバッチリ整えたんだ、少しばかり外出してもいいはずだ」

 解析はさまざまな情報を得れば得るほど、その完成度と効率は高まっていく。
 今までは視て行ってきたが、やはり実地調査をした方が早いということで……。

「──。コミ、何かしたか?」

言祝ことほいだのじゃが……何か問題でもあったのか?」

「いや、今死んだから。気持ちは嬉しいが、体が耐えられないからな」

「す、すまぬ……ツクル、無理をするのだけは止めるのじゃよ」

 残念ながら、それこそ死体に鞭を打つようなことしかできないからな。
 だがまあ、本当に気持ちは嬉しい……それに報いるためにも、頑張らないと。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 結界は今なお健在だ。
 内部から放たれる魔法、そして外部で戦う精鋭たちの努力の結果である。

 だが、向こうもただやられっぱなしというわけではない。
 少しずつこちらの手の内を読み取り、それに対策しつつある。

「だからここで、俺が出るんだよ」

「──来たか」

「悪いな、千苦。人も混ぜてくれ」

「……貴様は我らよりも、化け物染みているがな」

 とりあえず、『ベストペスト』の精度を高めるためには因子が欲しい。
 それも上位個体、かつ本来耐性を多く有する怪ノ物たちの情報の塊を。

 ……なんだか悪役っぽい台詞セリフだが、実際集めておきたいのだから仕方がない。
 さっさと集めて、鎮圧を済ませるのが一番だな。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品