虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

怪ノ物騒動 その03



 事の発端は先ほど考察した通り、身体的特徴から生まれた仲違い。
 それがいざこざとなり、闘争……果てには両陣営による戦争だ。

 とはいえ、延々とやっているのではなく、何百年かに一度のスパンでのやり取り。
 しかも互いに決めた場所で、そのときごとにルールを設けてやっているんだとか。

 ……がしかし、裏での暗躍も繰り広げられており、その一環が今回の問題だ。
 鳥居という世界への進出装置は、向こうとしては奪う意味のある物だったようで。

 ここまで大々的に攻めてくることは、これまで無かったらしいが。
 それはこちら同様に、向こうにも何かしらの問題があったからなのだろう。

「こちらも向こうも、千苦のように同朋たちが封印されているのじゃ。それを救い、帰るための術はいくらあっても困りはせん」

「……俺、余計なことをしたかな?」

「そんなことはない。ここは鳥居はあっても使えぬ、故に囮としての役割も持っていたのじゃ。それが使えぬとあれば、向こうが取るべき行動も限られる……それが防げただけでも御の字じゃ」

「なるほどな……ところで、向こうは鳥居を占拠してどうするんだ? ──どうせ誰も使えないだろうに」

 そうなのだ、鳥居には使用者識別プログラムを新規に導入してあった。
 コミ、千苦、あと外で情報収集をするために何人かのみが、鳥居を使うことができる。

 それ以外の者はたとえここの住民でも、追加で登録しなければならない。
 そして、それを行えるのは──俺だけで、誰にもできないようにしてあった。

「コミがそういう風にしてくれって言ったからそうしておいたけど、もともとこれを読んでいたのか?」

「……想定はしておったが、実際に活かされたくはないと思っておったのじゃがな。こちらにも向こうにも、嘘偽りを見抜く者が居るのじゃ。なればこそ、できないことこそを真実にしておきたかった」

「嘘発見の能力か……『プログレス』にもそういう能力があるんだけど、具体的にはどういう感じなんだ?」

「物ノ怪側の者の場合、当人が真実だと思う内容で判定しているのじゃ。しかし、向こうもそうとは限らぬ」

 嘘発見器、機械の場合は嘘を吐いた際の反応からそれらを見抜く。
 だが物ノ怪の場合、そういう反応とは関係なく、発言そのものから調べられるようだ。

 ちなみに『プログレス』の方も、現段階では相手の嘘を真実か判定できるというもの。
 ……しかしまあ、成長すれば事実かどうかまで分かると『SEBAS』は言っている。

「うーん。まあ、鳥居を守るために仮でも防衛していますってところを見せたいのはよく分かった。それで、具体的に俺は何をすればいいんだ?」

「うむ。ツクルには──」

 この後俺はやるべきことを聞き、すぐに動き始めた。
 それなりに忙しいが……まあ、鳥居のせいでもあるので仕方なかろう。


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