虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

古代箱庭防衛策 その12



 要塞都市に帰還後、『代表』の予定を確認してから休人に関する情報を説明。
 彼らはまだ拠点に残っているし、いずれ会うという流れそのものは断てない。

 だからこそ、早々に対策をしておいた方が良いだろう。
 できた案を実行するためにも、代表者の協力が必須だ。

「──とこのように、ある程度の情報を集めることができました」

「……ぎだ」

「はい?」

「やり過ぎだろう。そのユニーク種、とやらのことはよく分からんが、彼の守護者に匹敵する存在であることは分かった。だからこそだ、それをお前が操れるという情報が出ては危険だ」

 隠すことなく[シャロウ]のことも開示したが、そのことが余計に『代表』を心配させてしまったようだ。

 ただし、それは俺の心配。
 ……ジンリやら『騎士王』やらで傷ついていた心も、少しずつ癒えていくよ。

「『代表』さんもご存じの通り、私はこの世界の住民ではございませんので。最悪、そちらに避難していますよ。優先すべくはここに住まう民のこと、今はそちらを」

「……そう、だな。戦力に関して分かったのは大きい、さすがはタビビトだ」

「おそらく、そう差はございません。外に出る狩人たちであれば、それなりに戦うことができるでしょう……しかし、彼らもあれが最強の戦力というわけではありませんので」

「そうだな、お前のような奴がいる連中だ。底が知れないことは、民たちも重々承知しているとも」

 からかわれているが、そこは笑って聞かなかったことにする。
 俺より強い、ということであればそんな休人万単位で存在するだろう。

 ……生きしぶとい、というのであれば他の追随を許さないと自負しているけどな。

「事前情報で伝えた通り、ここに到達するまでには時間も掛かるでしょう。ですが、いずれ接触はあります。今回の調査で、彼らが反抗してもある程度対処できることは分かりましたので……」

「滞在を許可する、ということか」

「そうですね。そして、この地の掟とでも語り、特定の地域における戦闘を極力控えさせるようにします。皆さんがこちらの生物と仲良くしている姿を見せれば、自ずと認識は変わるでしょう」

「こちらとて、一部の区画以外ではそのような振る舞いはできないのだがな」

 区画ごと、それぞれの地の代表者によって古代人との対応は違う。
 一番温和な場所だと、特定の場所以外での戦闘をいっさいしないほどだ。

 まあ、そうじゃない場所でもある程度交渉はできるのだが。
 ……ただし、『交渉(物理)』となっているけどな。


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