虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

古代箱庭防衛策 その08

わけあって、このまま六時間ごとに更新です
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 休人、そして原人たちの職業固有の能力同様、ネームド種やユニーク種にはそれぞれ特有の能力が備わっている。

 当然、ユニーク種である[シャロウ]にもまた、[シャロウ]だけの力があった。
 それこそが、万物を狼として産み直す能力──“万物狼転”。

「そもそも、攻撃すること自体が間違いだからな。大自然の猛威に人が抗えないように、アレもまた一種の現象だよな」

《対象のステータスを参照し、狼型の魔物として生成する“万物狼転”。システム上、ステータスが設定されているモノならば、すべてがその対象に含まれます》

「人もか?」

《干渉の際、僅かでも抵抗されれば失敗となります。情報の改変を行い、無機物に命を擬似的にとはいえ宿す能力……判定はとてもシビアなものとなっています》

 抵抗する意思や機構があるだけで、狼化は防げるらしい。
 なので、戦っている間に狼に……という展開は避けられる。

 また、使っているアイテムなども、意思の伝達云々で防げるらしい。
 かなり気になるんだが……まあ、忘れないように[メモ]しておくとしよう。

 ──とまあ、何が言いたいかというと、それ以外にはほとんど作用するということ。
 たとえばそう、制御を完全に手放したエネルギーの塊とかな。

「魔力生物、そんなファンタジーな魔物も居る世界だからな……あーあ、ヤバいな」

 改めて、ドローンが映す光景に注目する。
 狼たちはその数を、これまで以上に増やしていた。

 これまでは木製の狼ばかりだったが、新たに火や風や光などの現象的な狼が現れる。
 そう、先ほど休人たちが放った攻撃、そのほぼすべてが狼となっていた。

「でも、凄いなちゃんと制御していた連中も居たわけだ」

《制御に関する『プログレス』もございますので、不可能ではございません》

「……むしろ、そういうの無しで魔法を飛ばしていたルリの方が凄いってことだな」

 ともあれ、優れた休人の中には魔法を奪われなかった者も居た。
 そして、そこから“万物狼転”の仕掛けはだいたい暴かれることになる。

「ここまでは想定の範囲内。ちょうど来た、第二勢でも暴けただろうからな」

《解析完了──平均レベルが200に到達しております》

「ちょうどいいな。[シャロウ]の適性レベルはどれくらいだ?」

《レイドの場合、およそ200かと》

 つまりはピッタリ、というわけだ。
 その数値は仮のものだし、今の休人たちは『プログレス』の補正もある。

 あのときの俺や家族とは違う……いい情報収集になりそうだ。


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