虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
古代箱庭防衛策 その02
かつて、恐竜型の魔物たちから逃げ延びるために隠れ潜んでいた古代人たちは、俺との邂逅で天然の要塞を生み出していた。
そして時が経ち、要塞はより機構を充実させたうえで規模を拡大している。
さまざまな技術が用いられ、人々は安寧を得ていた。
「これはなんとも……」
「ははっ、驚いたか」
「ええ。要塞都市、それが形となっていますね。民たちもとても楽しそうで……」
「『代表』、知恵ある魔物、そして守護者様たちによって、停戦協定が結ばれているからな。少なくとも、狩人以外が魔物に殺されるようなことは無くなったぞ」
いちおうでも、俺はこの箱庭の管理者。
なので挨拶も兼ねて、九つに分かれた区画の代表者である七体(+一人と)しっかり話し合いは済ませてある。
古代人の統率者、その名の通り『代表』が彼ら間の戦いで勝利していた。
その結果、多少ではあるが古代人の主張が通る……のかもしれないな。
「──さて、着いたぞ、この先に『代表』が居る」
「……どうしてアレだけは、あのままにしているのですか」
案内された『代表』の居住地、その屋根になぜか配置された黄金のしゃちほこ(仮)。
反り立つ竜か蛇の像に見られながら、俺はその中へ入っていくのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
しゃちほこ(仮)があるだけに、『代表』が居るのは要塞の中にある城だ。
その最上階にて、書類仕事をしているいかにも武人な男と俺は対面する。
「──我らが友、客人タビビト。いや、今は管理者様と呼んだ方が良いか?」
「いえいえ、これまで通りで構いませんよ。お久しぶりですね、『代表』様」
「様付けとは、これまた。すまんすまん、いつも通りタビビトでな」
「では、こちらも『代表』さんと呼ばせていただきますね」
書類を机からどかし、代わりに載せるのは代々引き継いできた槍。
やっぱり変わっていないな……と思いつつも、俺は地面に広がった書類を集める。
「手伝いますよ。むしろ、こういった物は速めに済ませることをお勧めしますよ」
「うっ……」
「私でも処理可能な物は、やっておきます。これでもこの箱庭の管理者、ある意味では一番の権限保持者ですからね」
すでに似たようなことを獣人国でもやっているので、その勝手はなんとなく分かった。
何より、『SEBAS』がすべてのサポートをしてくれるので、自動的に進んでいく。
そうして書類をせっせと片付けながらも、今回の用事を伝える。
「休人からの干渉はいかがですか?」
「……他の区画からも苦情が出ているな。まだここに辿り着いた者は居ないが、いずれは来るだろう。そうなったとき、我々は中立として振る舞うことになるが……彼らがどのように応えるか」
「今はまだ、ですね。しかし、そろそろ変化があるかもしれません。私の『プログレス』は普及し、知恵無き魔物たちでは対処も難しくなるはず……だからこそ、今回私はここに来ました」
俺は主に巻き込まれる側、巻き込む側の両方でやらかしていた。
今回は後者だな……『プログレス』が引き起こした問題、力による蹂躙を防がねば。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
550
-
-
63
-
-
4
-
-
111
-
-
140
-
-
1259
-
-
52
-
-
107
-
-
124
コメント