虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
古代箱庭防衛策 その01
冒険世界 W4
そこは滝が存在するフィールドの一角。
これまでは大して気にもされていなかった場所……しかし、今ではある存在が理由で多くの休人に注目されている。
「あー、本当に人だかりができてるな……こりゃあ入るのも一苦労だな」
箱庭、もしもの可能性を通った世界を小規模な空間で再現した場所。
そんなあったかもしれない可能性へ繋がる道が、この滝から行ける通路にあった。
「道は一本だけ。一度はオオサンショウウオが見張りをしているけど、今の成長した休人なら簡単だし……こういうことを商売にするのもありっちゃありか」
そんな場所なので、さまざまな目的を持って休人たちが集まっている。
ある者は挑むため、ある者は彼らを補助するため、ある者は──彼らを利用するため。
善悪問わず、そこはまさに人の坩堝。
そんな中で堂々と滝壺へ向かえば、隠蔽で潜んでいても情報を求める者たちからすればバレバレだろう。
「……さて、確認もできたしそろそろ行くとしますか」
《畏まりました──転移装置を起動します》
愛用の剣……ではなく鞘に仕込んだ、転移用の小型装置。
それは視界内の短距離転移だけでなく、座標指定の長距離転移すら可能とする代物。
本来の入り口は一つ。
しかし、すでに内部へ潜入したこともある俺は、万全の準備を整え内部への転移も可能にしてある。
なお、これは権限的な問題もあるので、他の休人にはできないことだ。
セーブ石(死に戻りポイント)も設置できないので、いちいち入る必要がある。
そういった設定も、『SEBAS』に勧められて行ったもの。
最悪、ここの入り口を破壊するだけで侵入が防げるのだから便利だよな。
◆ □ ◆ □ ◆
箱庭 古代世界
もしも恐竜が(魔力によって)生息していた時代、人類もまた人型で存在していたら。
そんな可能性を観測するため、創られたであろうこの世界。
人族は自然に適応するため、植物に関する魔法を手に入れた。
かつてはそれを生き延びるために用いていたが、今では使い方も変化している。
「──タビビト、久しいな」
「ええ、お久しぶりです皆さま方。あれから変化はございますか?」
転移地点から移動し、この世界の人族が暮らす区画へ来た俺を歓迎してくれたのは、すでに高度な技術を獲得した古代人たち。
現代技術をある程度教えていたが、それをさらに自分たちで高めていたようだ。
すでに冒険世界では失われた素材なども多くあるので、触媒には困らなかっただろう。
「かなりのな。休人……まあ、積もる話になるだろう。まずは街へ向かおう」
「……ずいぶんと、立派になりまして」
「ああ、驚いただろう? 更なる発展を遂げたのだ、ぜひとも楽しんでいってくれ」
嗚呼、昔の彼らはどこへやら。
だが気になることもいくつかある、その辺りをしっかりと確かめておこう。
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