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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

幽源の世逃げ その09



 握り締めた『エクスペリエンサーソード』と“千変宝珠”による連携攻撃。
 死角を攻めても対応してくるゴロムに、俺も考えを改める。

 手に持つ剣はそのままに、飛ばしていた魔力の剣を球体に戻して帰還。
 再び魔力を加工し、今度は俺を包む装備品の代わりにしていく。

 それぞれに身体強化の効果を与えており、身に着けた俺の動きをほんの僅かに高めた。
 少し強く握れるようになった感触を確かめて、ゴロムへ接近する。

「──では、次は剣技で挑みましょう」

「望むところだ!」

 剣と剣がぶつかり合う。
 能力値で圧倒的に劣る俺は、強制的に体を動かさせることで対応を間に合わせている。

 武神、剣神の戦闘データを用いて戦える以上、本来ならば負けることなど無い。
 だが、体が動くまでのラグなどが、その完璧なはずな能力に隙を作っている。

 先の先、ではなく後の先。
 ギリギリで攻撃への対応を間に合わせ、どうにかゴロムの剣を捌いている。

「これで、どうだ!」

「っ……これは」

 勢いよく地面を踏みつけると、大量の土煙が吹き荒れた。
 魔法か身体強化で通常以上に発生させたそれを、目晦ましに使うつもりなのだろう。

「……頼む」

《了解しました──視界を確保します》

 すぐに『SEBAS』がサポートし、俺の網膜は土煙の内部を暴く。
 視界にさえ捉えることができれば、すぐに対応できる──剣と剣が再びぶつかり合う。

「っち、その体でよくやりやがる」

「だからこそ、私は今なお生きているのですよ。貴方といい、私の過ごす世界といい……どうにも悪縁に恵まれていましてね」

「それを終わらせるいい方法があるぜ。ここで俺が全部断ち切っちまうんだ」

「それは素晴らしい。首ごと、というのであればぜひお願いしたいものです」

 向かってきた剣を弾き返し、受け流し、そのまま剣を振るう。
 だがそれも、あっさり弾き返されると、今度は風が俺を吹き飛ばす。

「──“風爆撃エアロバースト”!」

「──“千変宝珠・壁”」

 さらに発動した魔法に対し、宙に投げ出されながら自身の後方へ壁を構築する。
 どうせ防げないのだから、あくまでも壁は固定するために使う。

 激しい衝撃が何度も俺を打つが、俺が壁の壁になることで破壊を免れる。
 しばらくして、風が収まったことで俺は地面に着地できた。

「……終わりにしませんか? どこまで行こうと、目的を定めない限り終わりませんよ。そういう力を私は持っています。それに──もう、分かっているのでしょう?」

「…………チッ、一撃だ。あともう一撃だけ受けろ」

「ええ、お望みのままに」

 そして、ゴロムは溜めを始める。
 これを受け切れば……問題はとりあえず、一時的に解消されるだろう。


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