虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
幽源の世逃げ その09
男たちは拳で語り合うことで、その相手を理解する。
そんな河川敷決闘理論(仮)に則り、俺と反乱軍のリーダーゴロムは決闘を行う。
広い場所、かつ他の者に見られないというところへ移動した俺たち。
そこは見晴らしのいい荒野、まさに戦うにはちょうどいい場所だった。
「──準備はいいのか?」
「ええ、いつでも」
ゴロムが握るのは騎士剣。
本気で戦うということで、わざわざ用意された彼特注だった武器。
他にも騎士としての鎧やらも装備し、完全に本気といった状態。
不利ではないかと【幽王】は言ったが、俺はそれを受け入れた。
──アレもあるからな。
「では、『インストール』:エクスペリエンサーソード』」
「剣か? にしては、凄そうに見えないな」
「そうですね。しかし、これには想いが乗っていますので」
とある少年の成長に合わせ、同じように成長する剣型の『プログレス』。
かつて『初心者の剣』だったそれも、少年の成長で『経験者の剣』と化していた。
もちろん、俺が少年と同程度まで成長しているという事実は存在しない。
あくまでも、少年の使用度合いとリンクしているのがインストール式の利便性だ。
「そして──“神持祈祷:バトルラーニング・II”」
「……雰囲気が変わったな」
「そうでしょうか? では、その身を以ってそれがどれほどなのかをお知りください」
「上等だ。おい、早く始めろ!」
合図を行うのは【幽王】。
一国の王にやらせるとか、ある意味贅沢なことをさせての試合開始。
魔法を一発撃ってもらい、それを合図として俺たちは動く。
能力値の差もあり、先制はゴロム──いきなり剣を投擲!
もちろん、攻撃そのものは自動的に体が動いて回避。
衝撃ですでに死んでいるが……まあ、バレてないからセーフってことで。
「っ……騎士とは思えぬ作法ですね」
「んなもの、勝たなきゃ意味無いだろ」
「ええ、その通りですね。ですから、こうして動きますよ──“千変宝珠”!」
魔力に形を与えることができる『騎士王』作の魔術。
分裂させた魔力の球が、それぞれ剣の形を取って宙で待機。
「お返ししますよ!」
「その程度、どうとでも……っ!?」
「もちろん、ただ飛ばすわけではありませんのであしからず」
「死角を確実に突いてきやがる……面倒な」
これまでの立ち居振る舞いから、隙となる部分のデータ計測は済んでいる。
そのため、『SEBAS』の遠隔操作が向かう先もそうした部分を選んでいた。
だが、自分の弱点をしっかりと理解しているからか、危ういながらも致命的な攻撃に関してはしっかりと防いでいる。
このままやっていても、勝つことは難しいだろう……仕方ない、次に行こうか。
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