虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
幽源の世逃げ その07
どちらも自身の主張を曲げることなく、討論をしている。
結界を張っているから周りには聞こえないが……公共のど真ん中で言う内容ではない。
現在有利なのは人族復讐派のゴロム。
積み重ねてきた負の歴史があるからこそ、綺麗事を並べている和平派の【幽王】は強く反論ができない。
「いつかは裏切られる。和平? そんなことしても無駄だ、大衆の意見を纏めようと、腹に抱えたそいつら自身の思いまで変えることはできない。とっさに、直情的に考えるのはこれまで抱いていた幽魔族への憎しみだ」
「…………」
「霊魔のゴブリン、アレの子供に俺たちもどういう対処をする? 将来、繁殖する際に被害に遭うかもしれない誰かのため、そんな理由で赤子でも殺す。俺たちでもそうなんだ、アイツらがそう思わないわけがないだろ!」
幽人族にとって、霊魔族と霊魔は人型かそうでないかだけで同種の存在。
故に殺すことに葛藤はしようと、最終的にはそれを選べる意識にあるということだ。
それ自体、【霊王】だって和平を締結するまでに何度も味わっていることだろう。
……確認したところ、すでに複数本の万能薬が使用された痕跡があったし。
「そうね、たしかにそうかもしれない。刺客だって、毒だって何度も来たわ。幽人族にも幽魔族にも、そういう考えの人はいる。だけど、そうじゃない人だっているでしょう?」
「……ガキか」
「ゴロムの語る人たちは、そのほとんどが大人からそう学んで育ったからこそ、霊人に対する意識が恨み辛みになっている。でも、そうじゃない、分かり合えるとちゃんと伝えていれば変わるかもしれない!」
「変わらない、変われないんだよ……」
子供の頃からの教育というのは、その先にかなりの割合で関わってくる。
ショウやマイも、そうして多くのことを学び成長していくのか……ううっ、涙が。
独りで勝手に泣いている俺にも気づかず、二人の会話はさらにヒートアップ。
子供の話からそのまま、やがては思想云々になっていく。
「──人は魔を、本質的に恐れている。どれだけ言い聞かせても、本能がそう訴えかけてくるんだぞ? 失敗、挫折、後悔……それらが憎悪に転じ、やがて終わりを──死をもたらすんだ」
「……変えてみせる。子供たちに、あんな顔はもうさせない。見たでしょ、あの笑顔を。あれを一度でも見て、どうしてそうやってまだ諦めようとするの!?」
「…………平行線だな。俺はどうやっても、人族の欠点を忘れられない。そっちはどうしても、変われると信じているんだからな──おい、ここまで聞いてたんだ、少しぐらい俺たちの話に乗ってくれよ」
二人での話し合いは、これで終わり。
ゴロムは俺を巻き込んで、何かを言わせたいのだろうか……まあいい、俺もさすがに言いたいことがあったからな。
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