虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
幽源の世逃げ その04
──『蔽塞の小箱』。
死因:封印をトリガーとして、『死天』が生み出したアイテム。
対象が死ぬまで解除されず、どんな干渉でも壊れない……俺でも使用を躊躇う代物。
だがそれを使っていた。
その被害者が、【幽王】の方針に異を唱えた反乱軍のリーダー。
生きたままで行える解除方法を当時教えていなかったので、誰にもその封印は解けないまま幽閉されている……反乱したのにも関わらず、死刑にならなかったわけだ。
「まずはこちらを」
「……これは、鍵ね」
「『生解の開鍵』。例の物を開けるために必要な物です。特にこれといった説明はございませんが、特筆するのであれば……【幽王】様にのみ使用する権利が与えられている、ということぐらいでしょうか?」
無論、俺も使うことはできるのだが、そこまで言う必要は無い。
重要なのは──この世界の住民の中では、彼女だけがカギを開けられるということ。
「…………」
「ご利用なさるのであれば、こちらもお手伝いしますが?」
「……そう、ね。なら、せっかくだからお願いしよう──」
「反対です、【幽王】様! あの者を檻から解き放つなど言語道断! またあの悲劇を繰り返されるのですか!?」
檻ではなく箱なんですけど、といった野暮なツッコミはしないでおく。
大臣の一人が、悲鳴染みた声で【幽王】を相手に苦言を申し立てた。
そりゃあ革命しようとした相手を解き放てば、また同じことをされるかも……と思うことに何らおかしなことは無いだろう。
俺が来る前にも、すでに多くの犠牲が出ていたらしいし。
全員を救いきれない以上、解放には相応の代償が必要になる可能性だってある。
──それでも、【幽王】の握り拳が緩まることは無い。
「あれからもう何年か経っている。人族との和平も成って、当時反乱を望んだ人々もそのありようを受け入れている。だからこそ、彼にも認めてもらいたい。今この世界が、より良い方向に進んでいると」
「まだすべての民が心から納得しているわけではありません! あの者の帰りを待ち、水面下で動く者も居るのです! 思想は消えない、あの者を解き放てばこれまでの【幽王】様の努力は台無しに──!」
「何度だってやるわ。民たちが心の底から笑えないなんて、もうこりごり。今の、子供たちの笑顔を消させはしない……でも、彼がこの国を思って動いたのもまた事実。それは否定できない」
当時の俺は言われるがままに、反乱軍の鎮圧を買って出た。
もしそうしなかったら、この国はどのようになっていただろうか。
大臣と【幽王】は討論の末、やがて大臣が折れた──条件付きで。
俺と【幽王】は、兵士たちと共に城の地下へ向かうのだった。
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