虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
幽源の世逃げ その01
幽源世界
……窮屈な世界から解放されたい、誰もが一度は思ったことがあるのかもしれない。
鳥かごから解放されて自由な空へ、翼をはためかせ……みたいな感じで。
「──それができちゃうんです。このEHOなら!」
物理的もとい、肉体的な枷から解き放たれる霊体だけで活動可能な世界。
何より、渡航権を与えられるレムリアと接触できる休人が俺しか居ない。
つまりこの世界やアイスプルに居る限り、ジンリの追手から免れることができる。
……あと、俺は分からないが、それ以外にも居ると『SEBAS』は言っていた。
こちらに関してはガチで気づかれるとヤバいらしく、詳細は教えてもらっていない。
だがまあ、言われたからだいぶ経っても何もしてこないらしいので……大丈夫だろう。
「ふぅ……さて、ここでしばらくまったりしているのが吉なんだな?」
《はい。先日のイベント、そしてジンリの依頼を経て旦那様の知名度は僅かながらに向上しております。本来であれば問題は無いのですが、その微々たる違いをジンリは突いてくることでしょう》
「だろうなぁ……あーあ、不味かったかな」
《どのような選択をされても、ジンリは動いていたでしょう。最短での解決、あの場合はそれが最大の時間稼ぎができました》
いろいろと策を練っていたジンリ、当時の俺ができた唯一の抗いは──その策が出来上がる前に依頼を済ませてしまうこと。
そうして幽源世界に足を踏み入れ、誰も来ないことをいいことにまったりする予定だ。
俺がこのゲームを始めたのは、過去に囚われるためじゃないんだからな!
「まあ、責任とか思うところはあるが……それでもリーダーを強制されるのはな。いっそのこと、こっちもこっちで新しい組織でも作ればいいのかもな」
《……よろしいので?》
「うーん、家族で一旗揚げるって案も、だいぶ前は考えていたからなー。まあ、ショウが自分のパーティーでやっているし、ルリもルリで組織を作っているから無しにしたが……その方が都合がいいこともあるんだろう?」
《──畏まりました。では、プランを準備しておきます。旦那様の判断で、好ましいものがあればお選びください》
こういった問題であれば、『SEBAS』は俺に最終的な判断を任せてくれる。
その好意に甘えてしまうわけではあるが、しばらく考える時間が欲しい。
「でも、どうしてこの世界なんだ? 箱庭でも、いちおう誰も来ないって条件は満たしているわけだし」
《すでに呼称『原始世界』には、休人たちが辿り着いております。なお、まだ各区画のボスには太刀打ちできていないようですが》
「……そっか。なら、仕方ないか」
絶対はやはり存在しないのだろう。
自分で尋ねたことではあるが、秘密の場所が失われたことに、なんとなくショックを受ける俺だった。
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