虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル後篇 その28
しばらく渡された情報を読み込み、今後の予定を決めていた。
それも終わるとやることが無くなり、再び移動を始めることに。
「こっちの世界だと、事前に約束してないと会えないんだよな……本当、強くなると多忙になるんだな」
《そうした例を挙げるのであれば、旦那様こそがもっとも多忙なお方となりますね》
「ははっ、言えてるな。レベル999、その特典がもっと戦闘力向きだったらそうなっていたかもしれないなー」
レベリングの果てにあるのが、まさか鑑定情報の拡張版でしかないなんてな。
もし情報を知り得るスキルが無かったら、無用の産物と成り果てるところだった。
「ん? なんだか騒がしいな……」
《どうやら非公式の1vs1が行われているようです。賭けられるポイントに制限はありますが、通常のPvP同様のルールでポイントのやり取りが可能です》
「ふーん……あっ、アレが使えるか?」
《【闘資家】の能力は、対象が応じなければ効果を発揮しません。旦那様のご意向に従うのであれば、ご利用はお控えした方がよろしいかと》
今は姿を隠し、認識も偽装しているので平気だが……少なくとも話すのであれば、姿を晒す必要があるか。
そうなって、周囲に認識偽装を破れる輩が居た時は……俺が襲われることになるな。
せっかくの成績に傷がつくのはごめん被るので、このままを維持しておきたい。
ただでさえ自死の数が多いのだから、他殺は可能な限り減らしておきたいのだ。
「【博徒】で混ざるぐらいしか無いけど……もうレベルはカンストしてるしな。わざわざやるぐらいなら、もっと別のことをすればいいんだけど。今は、それも無いのか」
なお、賭ける側はポイント以外にも普通に金銭のやり取りなどもしている。
休人の飽くなき欲望は、こういう部分にも出てしまっているのだな。
「いっそのこと、俺が経営者側としてやってみる……のもありかな?」
《可能ですね。獲得経験値は興行収入に応じることになりますが、旦那様であればその問題も簡単に達成可能です》
「…………えっ、そんな方法あるの?」
《はい、旦那様にしかできませんよ》
そこまで言われると、なんとなく答えにも心当たりが浮かぶ。
俺限定のことなんて、『超越者』かアイスプル関連だしな。
「うーん…………やることが無くなったら、やるとしようか」
《畏まりました。では、そのように》
いつものように、俺の頼んだことをいつでもできるよう準備してくれるのだろう。
だが、今回の件は間違いなく周囲を巻き込む必要がある……嗚呼、絶対怒られるな。
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