虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル後篇 その27



「──『生者』ではないか」

「…………『騎士王』か。ええ、お久しぶりですね」

「むっ、ここでそのような口調にする必要などあるまい。いつものように、セイちゃんとキシちゃんと気安く呼び合おうではないか」

「そんな言い方したことないだろ。どっちもただの二つ名みたいなものなんだし、そのままでいいだろそのままで」

 ポイントに有効期限は無かったので、またより上位になったら取れる景品までポイントは溜めておくことに。

 そして、再びやることも無くなった俺はあてもなく彷徨い……出会った。
 冒険世界最高の原人、万能の『超越者』たる『騎士王』。

 魔術でその身を偽り、俺以外に認識できない姿で現れた。
 ……どうせなら、俺にも姿を晒さないでどこかに行けばよかったのに。

「……今、『生者』の前に姿を出す必要など無かったと思わなかったが?」

「思ったけど?」

「……よくもまあ、そんなに平然としていられるな」

「事実だし。まあいいか、ちょうど聞きたいこともできたんだ、答えてくれよ」

 嫌がったくせに、必要なことができたからと絡む俺……傍から見たらクソ野郎なこと極まりないのだが、それでも『騎士王』は俺の問いに答えようとしてくれている。

「──というわけなんだ」

「いきなり八文字で纏められてもな……しかし、このタイミングでの接触からして、大会終了後に行うこと──景品交換の内、私に尋ねるようなこと……なるほど、職業に関することか」

「……マジで凄いな。いやまあ、その通りだけども」

 察しがイイ、と言うレベルをはるかに超越した理解力。
 お陰でさっそく本題に入れる……あっ、そもそもそれが『かくかくしかじか』なのか。

「しかし……私自身が与えられる【騎士】と【聖騎士】はすでに済ませてある。そうなると、それらが可能な職業の就職者や職業結晶の入手方法を伝えることしかできないぞ?」

「悪いな。ついでに言うと、聞いてもすぐに全部やるわけじゃないし。けど、いつかは全部の職業を解放したいからな」

「ふむ……理由は?」

「大会を見たからな。まだまだ力が足りないし、これから多くの奴が成長する。もし、家族がピンチになったとき、何もできないのはごめん被る──たとえ相手が誰だろうとも、勝つ必要があるんだ」

「つまりそれはあれか──この私が相手だろうと、勝つと……そう言いたいのか?」

 圧が俺を襲う。
 すぐに体は再構築されるが、その都度圧を掛けて俺を圧し潰す『騎士王』。

 俺以外の抵抗できない奴が受けていたら、すぐさま跪いていただろう。
 なんてことを思いながら、平然とした表情で答える。

「えっ? それは無理だろ」

「…………ここまでの話は何なんだ」

「そっか、お前が相手だと無理だもんな。訂正するよ、たとえ相手が誰だろうとも、家族が喜ぶ結果にするため……可能な限り力が欲しい、みたいな感じだな」

 呆れて嘆息する『騎士王』。
 圧が解け、掛かっていた重みが失われる。

「最後に一つ訊くぞ、『生者』は私に勝てると思うか?」

「うーん、周りへの被害を度外視すれば、ギリギリなんとかだな。もちろん、そんなことすれば家族に怒られるからやらないけど」

「できないとは言わないか。はっ、それでこそ『生者』だな──これが言われた情報を記したモノだ。有効に活用しろよ」

「おう、ありがとな」

 なんだか満足そうな表情で、『騎士王』はこの場を去っていった。
 しかしまあ、俺が勝つ可能性か……仮にそうなったとき、冒険世界はどうなるのやら。


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