虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル後篇 その19
──ショウは俺の、そしてどこかで見ているであろうルリの想いに応えた。
定番の覚醒イベント。
俺の視点から見ると何とも台無しな気がするものの、傍から見ればれっきとした王道イベントのムードだろう。
「──能力名“チェインソウルズ”、かぁ。名前が複数形な時点で、ショウが仲間に恵まれているのがよく分かるな」
《効果は初期能力である『ブレイブソウル』の、能力値補正を高めるものです。条件を満たした仲間が多ければ多いほど、常時その補正値が向上します》
現在のショウは、“オーバーブレイブ”の効果でその強化率がさらに十倍だ。
だからだろう、“チェインソウルズ”の分の補正もさらに強化されている。
目に見えるほど、身体スペックを高まったショウは『覇獸』とやり合った。
決して有利になったわけじゃない、しかし対抗できるぐらいにはなっている。
《“チェインソウルズ”の通常効果は先ほどお伝えした通りですが、坊ちゃんと強い絆で結ばれた者の場合、補正値は通常の三倍かつ特殊能力が追加で入ります。現段階では、一つずつの発動となりますが》
「……なんというチート能力。ラスボス級と戦うときの能力に目覚めちゃったのか」
現状、その特殊能力とやらを使えるほどに好感度が高いのはパーティーメンバーに限られているらしい。
家族愛という好感度は、どうやら計算に入れてくれないようで……なるほど、ハーレム用の能力なのかもな。
「というか、俺の『生者』チートやルリの幸運チート、マイの従魔チートのどれかが使えるだけでも、厄介極まりなくなるしな」
舞台上のショウは、剣にそれら特殊能力を載せて『覇獸』を攻め立てている。
複数の効果が明らかに同時で発動しているが、まあ“オーバーブレイブ”の影響か。
命の制限時間もだいぶ限られているので、勝つために全力を尽くす必要がある。
大量の剣を同時に操作し、一気に畳みかける戦法を取るショウ。
創作物だとなんだか負けそうなアレだが、ショウはそれを囮にして近づく。
そのことは『覇獸』も察知していて、迎え撃つように構えを取る。
──そして、激突。
ショウの構えが一瞬ブレたかと思えば、いつの間にか『覇獸』を斬っていた。
居合ではない、しかし何かをなぞろうと意識した高速の斬撃……あれはいったい。
《おそらく、坊ちゃんが通っているという道場で見た技なのでは?》
「……なんだファンタジー世界で、しかも今の今まで使えないような超高度な技が現実世界にあるのやら。まあ、定番だけど」
──後に、あれが『界錯』という技なのだとショウから教えてもらった。
何でも斬れるし、何を斬るかまで決めれるチート剣技なんだとか。
それによって、『覇獸』の闘技場におけるHPと本来の生命力の紐づけを切り裂いた。
つまり、生きていても死んだという判定になるわけで……。
突然退場扱いとなった『覇獸』に、俺も会場中も驚いたものだ。
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