虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル後篇 その15



 本選は全部で五回戦。
 それを三日の間に行い、イベントも終了となる予定らしい。

 初日は午前に特殊生産部門の決勝、そして無差別部門の予選が行われた。
 先ほどまでの一回戦、そして二回戦が本日の午後に行われる。

「というわけで、ショウの二回戦だが……これまた白熱の戦いだな」

 ショウが相対するのは、少女の剣士。
 始まる前にかなりやり取りをしていたように見えたので、おそらくだがすでにフラグを立てていたのだろう。

 剣と剣がぶつかり合い、甲高い音が響く。
 注目すべきはその音が、会場全体に届くほど大きいものであること。

 つまり、それだけ剣戟が強く打ち合うということなのだ。
 高い能力値だけでなく、優れた技術によって成されている。

「息を呑むってのは、こういうことだよな。互いに本気ってのが分かるし、真剣だからこそできるこの空気……盛り上がるな」

《──短期決戦ですね。坊ちゃんはすでに、“オーバーブレイブ”を発動しております。対戦相手の少女もまた、アイテムの効果で生命力を削りながら戦っているようです》

「勝つために、二人ともいろいろと賭けているのか。どうしてそこまでやるのか、とかは非常に気になるところだが……まあ、それはマイ辺りが問い詰めるかな?」

 舞台上では、少女がショウの剣を弾き飛ばしていた。
 だが、ショウは弾かれた剣に意識を向けることなく、逆に少女の剣をはたき落とす。

 体術も磨き上げているのは、通っている道場の影響だ。
 少女もまさか、剣をまったく気にせず反撃してくるとは思っていなかったようだな。

「ショウ、一気に決めるか」

《回収されてしまえば、状況は坊ちゃんが不利となります。相手が動揺している内に、畳みかけるのは間違いではありません》

「たしかにな。でも、相手もだいぶ冷静さを取り戻しているな……それでも、剣が必要なタイプなのか? ずいぶんと執着しているみたいだが」

《確認したところ、彼女の『プログレス』は剣に依存したもののようです。媒介として剣が必須であるため、取り戻そうと躍起になっているのかと》

 実際、『プログレス』の中には何かしらの媒介を必要とするモノは多い。
 ただ、武器系の場合は媒介となる武器自体も生成する能力が付くはずなんだがな。

 彼女の場合、そういったパーソナリティなのか、もしくは生成能力分もリソースを削り攻撃に特化しているかのどちらかだ。

 何かしらの問題を抱えているのだろうが、それを解決するのは俺ではなくショウ。
 この後、手刀を突きつけて勝利するが、彼女は舞台から逃げるように出ていった。

 ──創作物としては定番だが、第三者的には何があったかさっぱりだな。
 まあ、それでも分かることが一つある……とりあえず、お祝いはまた今度にしよう。


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