虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル後篇 その14



 魔法使いは魔法陣を利用しようとし、そうはさせまいと動くショウと機人族。
 ショウは剣──星鉱剣[フライハット]を握り締め、二人から意識を離さない。

 魔法使いも機人族も、勝つための切り札を隠し持っている。
 最後まで取っておくべきか、それを考えながら戦うのが大会というものだ。

「っと、魔法使いの仕掛けがそろそろ整うみたいだな」

 魔法使いは魔法陣に到達していない。
 しかし、直接干渉するのがもっとも手っ取り早い方法にしても、時間を掛けることで異なる手段も可能にする。

「『マナソーサラー』だっけか? 二つの意味で上手いから、よく覚えていたよ」

《魔法使いの意である『ソーサラー』に、操作する者という意味で『操作er』といった表記ですね。あくまでも、『プログレス』の能力名は発現者に合わせて決まりますので、こちらでは何もしておりませんよ》

「……うん、まあそれはいいか。それより、今はショウの活躍だもんな」

 魔法使いが何をしたかと言えば、自身の魔力を飛ばしての遠隔操作だ。
 もちろん、その目的は当初からの狙いだった魔法陣への干渉。

 重力魔法の術式は書き換えられ、魔法使いの意思によって再び発動する。
 空間ごと掛けられていた重み、それに負けてショウと機人族の動きが再び低下した。

 そのタイミングで、魔法使いは切り札を使い切る。
 重力魔法で動きを止められた二人に対し、自分は対となる無重力の魔法を施す。

 そちらの魔法の強さを高め、ぷかりと浮かび上がる魔法使い。
 そして、眼下に広がる魔法陣の大きさを拡張し──『マナソーサラー』を再起動。

「やっぱりか……まあ、他人の魔法陣の使い方なんて二つぐらいだよな。しっかりと使うか、もしくは──ああして爆発させるか」

 魔力の過剰供給による暴発。
 意図的に術式を暴走させることで、それまでの維持によって溜め込まれた魔力ごと一気に外部へ解き放つ。

 浮上した魔法使いだけが、その範囲から逃れている。
 ショウも機人族も重力で動けない中、最低限の防御を行ったようだが……はてさて。

「機人族の方はエナジーバリアか? ただ、アレは物理にも魔力にも対応している分、完全な防御はできないよな。で、ショウの方は剣で斬るのができないと分かったから、星気で何とかしているみたいだな」

《星気は星に存在するあらゆるエネルギーに対応しているので、ショウ坊ちゃんが持ち得る策の中でも、上位に存在する防御手段だったかと》

「万能な分、どの状況で使ってもいいしな。消耗をさせようと大技を相手使った時、本来の防御手段を使って何とかする……みたいな戦術も考えられるか。さすがショウだ」

 機人族は大破、退場はしていないもののかなり追い込まれている。
 だが、ショウは剣に残る星気を一気に消耗する代わりに完全防御を果たしていた。

 魔法使いも上空で驚いた表情をしている。
 その隙を突き、一気に動くショウ──切り札の一つ“オーバーブレイブ”を発動した。

「まあ、このタイミングでやらないと逆に危うかったかもな。機人族は当然自爆するだろうし、魔法使いも似たようなことができただろうし……空飛ぶ斬撃はさっきもやったし、隠せているみたいだ何よりだ」

 放たれる二発の斬撃。
 それらがほぼ同時に対戦相手に命中し、舞台から退場させる。

 そして聞こえる終了のアナウンス。
 さすがはショウだ……よし、今度こそお祝いした方がいいかもな。


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