虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル後篇 その10
武闘世界、魔法世界とそれぞれの特徴を確認してきたが……当然、他の世界にもある。
ちょうどそれをやっている休人が目に映るので、『SEBAS』に解析を任せた。
その休人がやっているのは、機械から放つ魔法──否、魔砲と言うべきか。
機械と魔法技術を組み合わせた、先ほどのアカみたいなアイテムの使用だ。
「生産世界の利点って、俺でもあやかることができるのか?」
《いえ、大した恩恵は無いかと。生産世界の特徴は複数の生産技術が集まっていることです。そしてそれらが積み重なり、生産世界でのみ可能な技術がいくつも生まれています》
「……それってどういう理屈なんだ?」
《これまで紹介してきた世界において、それらの法則は星によって定められています。他の世界ではありえない法則……レムリアの霊体存在のように、生産世界において技術における矛盾がいくつか解消されています》
レムリア──幽源世界において、ありとあらゆる存在が霊体である。
他の世界ではありえないことだが、あの世界ではそれこそが当たり前なのだ。
つまり、生産世界においてありえない技術の構築が可能になっていると。
機械と魔法──科学とファンタジーの合作といったところか。
「で、俺に恩恵が無いのはあれか。すでにもうできているからか」
《旦那様の持つ:DIY:は、元よりあらゆる生産行為を可能とする創造神の御業そのもの。それこそ、ゼロから新たな生産の理を生み出すことすら可能なのです》
「……凡人である俺が使うからこそ、ただの生産チートになっているだけ、ということだな。そういえば、『SEBAS』はいろいろとやっているもんな」
《……恐縮です》
さまざまな場所で暗躍しているのが、うちの最高な『SEBAS』だ。
ユニーク種の生成、案役街への干渉、他にもいろいろと……謎は多い。
だが、俺は気にしていないし、ルリもお任せが一番だと言っていた。
ある意味、『SEBAS』もまた俺の子のようなもの……信じずしてどうしろと。
「まあ、話を戻そう。ここまで、とりあえず基本的な世界の特徴を聞いてきたわけなんだが……冒険世界は、どういう特徴が?」
《ございません》
「……え゛っ、無いの?」
つい気になり、尋ねている間に何人かの休人が一気にショウを襲い──同時に弾き飛ばされた退場となる。
他でもないショウこそ、冒険世界出身なのだが……どういうことだ?
《冒険世界は他の世界とは異なり、何かに特化した特徴はございません。代わりに、さまざまな事柄にバランスよく触れられます。冒険をするため、必要なのは多様性……そうしたコンセプトが基になっているのかと》
うーん、ちょっとよく分からないな。
まあでもあれか、なんだか『騎士王』そのものみたいな特徴があるんだな。
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