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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル後篇 その09



≪無差別部門──予選開始だぁああ!≫

 実況の宣言通り、バトルロイヤル形式での予選が始まった。
 他の部門のような細かいルールは不要、一定人数までここで一気に削り合うらしい。

 なお、人数は六十四人。
 それを次は四人で戦わせ、あとは一人になるまで二人ずつ戦わせるとのこと。

「隠れ潜んで突破するか、それとも堂々とすべてを薙ぎ払うのか。はたまた、仲間と協力してするのもあるな……うん、面白い」

 用意された席は個室で、望めば飲食物のデリバリーまでやってもらえる。
 居心地のいいこの場所で、息子の活躍を見ることにした。

「『騎士王』は参加せずとも、冒険世界が誇る【勇者】様は降臨する。そのうえ、同格の原人たちも来るだろうからな……『超越者』じゃないなら、『プログレス』でさらに強化されるし。うん、超ヤバいだろ」 

 別世界の特異的存在が、どういった呼ばれ方をしているかは不明だ。
 しかし、『プログレス』は『超越者』となる分のリソースを食って成り立っている。

 つまり各世界、似たようなシステムがあれば異なる形で『超越者』が生まれるのだ。
 まあ、俺がそれに成れるか不明だが……調べる価値はあるんだよな。

「さて、各世界の力がよく分かる乱戦だな。強者は隠しているけど、そういうのを考えていない。あるいは使わないと突破できないと自覚している奴らが、解放してくれているからよく分かるな」

《武闘世界の特徴は武技の特殊派生、及び超強化。武器や肉体に関する能力のみに限定すれば、どの世界よりも多くの種類を有しているはずです》

「アレか? 古来よくある中華武術とか日本の古武術とか……そういうのもあるのか?」

《それだけでなく、各種族オリジナルの武術などもございます。他の世界との違いは、武技一つひとつを強化可能な点です》

 何でも、武技は後ろに『改』だの『真』といった単語が付き、強化されるらしい。
 武闘世界では、そんな武技の強化も自分たちでほぼオリジナルでやれるとのこと。

 実際、武闘世界っぽい奴らは武器からさまざまな事象を生み出している。
 それこそが『SEBAS』曰く、武術のカスタマイズによるものなんだとか。

「で、魔法世界の場合はその魔法版だと。これまたずいぶんとド派手になっているな」

《通常の魔法改良の場合、魔法における各比率を調整することで射程や威力などを変えることが主になります。しかし、魔法世界の改良の場合、余分な魔力を供給することで、通常以上の性能を可能とします》

「それはどの世界でもできるんじゃ?」

《可能ではありますが、魔法システムに制限が掛けられているとお考えください。比率が狂えば魔法は失敗扱いとなり暴発します。それを抑えるため、設けられた制限を取っ払ったのが魔法世界の理となります》

 要するに、上級者向けの文字通り魔改造ができるのが魔法世界なわけだ。
 たとえば、通常の爆発魔法を某爆裂魔法にする……ぐらいの超強化ができる。

 そりゃあアレを再現するなら、その過程で失敗が何度も起きるだろうな。
 この会場でお披露目されるのは、そうした改良の成功版……模倣ってできるかな?


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