虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

多世界バトル後篇 その05



 えげつない能力“精辰星意”。
 特に、種族としてレベルの限界値がかなり低い者たちには効きやすい対人向けデバフ。

 一定領域内の敵対者と、俺のレベル999から差し引いた分のマイナス補正が発生。
 また、その成功率もレベル差によって行われるため、抗うこと自体はほぼ不可能だ。

「領域はこの舞台全域、上下ともに圏内。一定時間ごとに弱体化するうえ、判定の回避はほぼ不可能。止める条件はただ一つ、私を殺すことだけですよ」

「そんな能力……聞いたことも無い」

「出身世界の秘密、ということでどうか。今はそれよりも、抗ってください」

「ッ……展開──“複合錬金・魔剣”!」

 剣を生み出していた“武装錬金”と魔道具の回路を描いていた“魔道錬金”。
 それらの組み合わせによって、魔道具の回路が刻まれた剣──魔剣が誕生する。

 闇が地表を覆う中、アカの放つ魔剣は赤く発光しだす。
 数はどんどん増えていき、闇を払うように輝きが増していく。

 それはつまり、『グレイト・レッド』の効果が向上することを意味する。
 デバフによって低下していた能力値を、落ちる前と同程度まで引き戻していた。

「ですが、時間が来ればまた下がりますよ。果たしてそれまで、持つかどうか……」

「関係ない。勝たせてもらうぞ」

「そ、その手に持った赤いポーションはいったい……」

「『レッドポーション』。体内に赤い液体を取り込めば……どうなるか分かるか?」

 もう、俺が能力の詳細を理解している前提で話すアカ。
 ……そう、赤色の装備ではなくアイテムを使うことが能力の発動条件。

 赤色のポーションの効果は、単に赤いことによる効果補正だけではない。
 それを体内に入れることで、体内の赤の濃さを高めることにある。

 皮膚が赤くなるわけじゃないが、背後に赤色のオーラが漂い始めた。
 その分もまた、アカの身体能力を向上させる補正となる。

「展開──“複合錬金・魔械兵”」

 音の響きではよく分からなかったが、陣から現れた機械の兵士たちを見て即座に理解。
 手から放たれるさまざまな魔法……魔法が使える機械、それで魔械兵なのか。

「ならばこちらも」

《“星攻化身”起動──操作を開始します》

「ついでに──“極小土ミニマムソイル”!」

 手袋から生みだされる大量の動物たち。
 そして、土魔法から連鎖するようにこれまた大量のゴーレムたちが魔械兵たちへ向け、攻撃を行っていく。

 そうこうしている間も、“精辰星意”によるデバフは延々と続くわけで。
 このままでは俺の勝ちだ……さぁ、どう動くのか?


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