虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル後篇 その04
──『プログレス:グレイト・レッド』。
それがアカの保有する能力で、赤尽くしの理由である。
赤色の装備やアイテムに対して、本来の性能を強化するという効果だ。
加算式も乗算式も、どちらでもその恩恵にあやかることができる。
アカはしっかりと『プログレス』を成長させ、その効果を高めていた。
初期では単に補正を倍加していたのだが、現状ではその倍加は赤色のアイテム所持数に準じている。
また、一定領域内が赤色になるほど、その分だけ補正そのものも強化されていく。
まさに『至高の赤』、そしてその使い手のアカもまた厄介なものだ。
「先ほどから赤色の剣を辺りに散らしているのは、赤色の領域を広げるからこそ。ならば私は、黒く染め上げるのみ──“極小闇”」
再び広がる闇。
ただし今度は、アカではなく周囲に広がる赤色を消すために。
「くっ。展開──“魔道錬金・炎雷”!」
アカはそれに対抗するように、空から大量の雷を降らせる。
ただしその雷は、地面に触れた途端に発火して赤色の輝きを闇に燈していく。
「無駄です──“極小闇”」
ありとあらゆる魔法から、俺の使うことのできない魔法を『グランドマロット』は引き出してくれる。
あえて属性に合わせる偽装を行うため、闇属性の魔法で発動しているが……本来はその必要すらない。
ただ適当に魔法を使えば、付け合わせとしてあらゆる魔法を引き出せる。
今回の魔法もまた、そうして闇属性らしさが醸し出されるものだった。
「名を“奈落虚沼”。黒以外のすべてには、沈んでもらいましょう」
悪魔の系譜に属する種族が得意とする、奈落魔法の一つ。
何もかもを呑み込むことができる沼を生み出し、文字通りのゴミ掃除を行える。
剣も雷も、物質も概念も関係なくその底無き沼へと沈んでいく。
色はどんどん黒く染まり、少しずつアカから放たれる威圧感が弱まる。
「さて、どうされますか?」
「……ならば、直接倒すだけ!」
「はははっ、どうぞご自由に。こちらも抗わせていただきますがね──“星変万還”」
玉は姿を変え、今度は盾に。
すぐにそれを手放すと、勝手に浮かび上がり俺の周囲を飛び回る。
イメージしたのは自動防御。
盾は壊れない限り、何度でも俺に降りかかる攻撃を防御するだろう。
そして、俺の武器は玉以外にも複数存在している……それらを同時に使うことこそ、俺の強みである。
《代行開始──リンク完了》
「それじゃあ始めましょう。これこそが、私の本気──“精辰星意”、戦うことをここに誓いましょう!」
「っ……!?」
いきなりデバフを受け、ガクッと空から落ちかけるアカ。
領域に影響を及ぼせるのは、自分だけではないことを思い出しただろう。
相手が強化を続けるのであれば、俺はその分だけデバフを施せばいい。
単純なやり方ではあるが、それでも効果的だよな。
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