虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル中篇 その27

連続更新です(04/06)
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 遺骸──本来魔物のドロップは部位ごとに分けられて行われるが、解体スキルや特定の職業に就いていると、死体を丸々ドロップする場合がある……貰える経験値が減るけど。

 ネームド種やユニーク種の場合も同様。
 しかし明確に違うのは、条件さえ満たしていればそうしたスキルや職業が無くとも、遺骸をドロップするということ。

「名工である『生者』を見込んでの依頼だ。まさか、断るのか?」

「……安い挑発だな。いいぜ、やれる範囲でやってやるよ」

 改めてその遺骸を観察する。
 それは小回りの利きそうな小竜だ。
 とはいっても竜なので、だいたい大きさは軽の車ぐらいはあるな。

 鑑定系の職業を“職業系統樹”でセット。
 視たアイテム名は『乗散竜完全遺骸[ドラグライズ]』、つまりそういう名前のユニーク種だったのだろう。

「ところでこれ、どうしたんだ?」

「実はこの大会が始まる前に、この竜が領土で暴れていてな。他の騎士たちにも任せられず、私直々に下した結果だ」

「……優秀な職人もいるだろうに」

「何を言っている。彼らもまた、私の聖鑓を目にしているのだぞ? ユニーク種の加工を任せようとしたが、誰も名乗り出なかったのでな。そうなれば、任せるのは彼らも期待する者しか居ないだろう」

 なんともまあ、そこまで言われると改めて辞退しづらいな。
 周囲の人々も、ユニーク素材で何をするのかと遠目に眺めている。

 そんな視線で殺されつつ、どのような形で加工するのが一番かを考える。
 剣は星剣があるし、槍もまたしかり……防具も代々の『騎士王』が揃えてあるからな。

「となると……杖、なんてどうだ?」

「ふむ、その理由は?」

「キャスタ……ああいや、なんとなくだ。魔術の利用に杖は邪魔臭いけど、大規模な魔法でも使うときには便利だろう?」

「無くても可能ではあるが……『生者』お手製のモノとなれば、気になるな。事実、聖鑓も聖剣に負けず劣らずの代物。そんな事態、これまでどの『騎士王』も経験してないぞ」

 昔、有名なゲームで『騎士王』というかそのモデルキャラが杖も使っていた。
 剣も槍も使っているわけだし、杖が有ってもいいかな……という安直な考えだ。

「では、杖を依頼しようか。報酬はどのようにすればいい?」

「まっ、実験に協力してくれればいい。可能であれば、ルリに実験の映像を観させてくれればなおのこと嬉しいかな?」

「奥方にか? まあ、構わないが……」

 どういう意図か考えているようだが、単純に観たいからだ。
 うん、俺も爆発の魔法でも派手にやっているところがぜひとも見たいです。


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