虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル中篇 その18
そして、三回戦。
休憩を挟んで午後の部なのだが、観客たちのテンションは上がったまま。
まあ、特殊生産部門とは名ばかりのハイレベルな闘いが行われているからな。
別試合でも、ロボットに匹敵するレベルで盛り上がる物が出たそうだし。
そんなこんなで再び始まった。
相手はランダムで選出らしいので、全員が当たる可能性を予測しなければならない。
≪赤コーナー、冒険世界より参戦。いったいこの人、どれだけ隠し札があるのか!? やはりびっくり箱は伊達じゃない! 敗北など知らない──ゴンベエ!≫
歓声を浴びながら舞台へ登っていく。
中でも三人の声だけは『SEBAS』が抽出してくれているので、そちらの方向へそれとなく手を振っておいたりする。
しかし、大義名分を持って堂々としていられるのはイイ。
この喜びを守るためにも、なんとしても勝ち続けなければ。
≪青コーナー、冒険世界より参戦。その叡智は随一、その手で開く物語は森羅万象を封じた魔本。果たして、死を知らないあの人に終わりを与えられるか──フィロソフ!≫
名を呼ばれ、転移してきたのは白衣を身に纏う青年男性。
間違いなく原人、だって金髪で西洋系の顔立ちだし……見覚えがあった。
話をしたことはないが、前にある場所で見た覚えがある。
そう、あそこで──強者たちの宴で見た覚えのある顔だった。
「初めまして……で、よろしいですか?」
「そうだ」
「とりあえず自己紹介を──『生者』です」
「知っている。『学者』だ」
その名前はかつて、『錬金王』のアトリエで聞いたことのある名前だ。
休人が訪れるよりも前、この世界とは違う世界から来た者から知識を得た者だと。
だが、それ以上のことは不明だ。
この部門に参加している以上、何かしらの生産スキルを持っていることだけは分かるのだが……さて、どんなスタイルなのやら。
「まだまだ末端ではありますが、本日はその胸をお借りさせていただき──」
「笑わせるな」
「?」
「それが負けを前提とした者が浮かべる顔なわけがない。それは勝つことを前提とし、いかにして相手を立てるか考える顔だぞ」
……ポーカーフェイス、向いてないかな。
話からそうした交渉ごとに向いていないはずの『学者』からも、そうして指摘されてしまうとは。
「ははっ──」
「胡散臭い演技は続けても構わん。だが、この時間だけは全力を出せ」
「……お断りです。それをするには、貴方では条件が満たされない」
「面白い言い回しだな。いいだろう、ならば本気を出せばいい」
なんて会話をした後、合図とともに俺たちは闘いを始めるのだった。
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