虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル中篇 その17



 というわけで、少々卑怯さが目立ったが勝利することに成功した。
 ……そもそも、真っ向から勝つことができるほど『超越者』は甘くないからな。

 自分で言うのもアレだが、完全に滅ぼそうとするなら俺は『騎士王』以上に殺せない。
 一番の雑魚である俺でもそんななのに、それ以上の実力者を倒す方が難しいだろう。

 単純な話、真面目に挑もうとするなら弱点でも突かない限り倒せないのだ。
 相手の得意分野で勝つ、それが可能ならそいつは間違いなく次代の継承者だろう。

「ふむ……しかし、『超越者』の権能を偽造しておかないといけないか? スキルでも、職業能力でもない権能。頭のいい奴は、そういうのに目を付けそうだし」

《掲示板でも権能に関しては、多くの考察が挙げられております》

「【創槌使い】の方には行き着くだろうが、それでも『造槌』の高速生産の方には絶対届かないしな。現状、『プログレス』でそういう能力は発現しているのか?」

《いいえ。職人たちが心がけるのは、生産速度ではなく品質です。魔物を生成する、早口言葉を得意とするといった『プログレス』には、速度向上を促すルートも発現しているようですが》

 魔石を注ぎ込むことで、『プログレス』は意図的に成長する方向性を弄れる。
 なので、時や速度に関わる属性を有する魔石を注ぎ続ければ、そういう風になるはず。

 まあ、これは『プログレス』の原型であるメカドラでは分からないこと。
 思い付きだけで組み込んだシステムだし、最後はどうなるのやら……。

「権能はそうだ、全部表記を『アルティマ』で統一しよう。『アルティマ○○』みたいな感じにしておけばいい。ちなみに音の響きだけで、特に理由は無い!」

 神々が求める『プログレス』は、すべてが『マスター』と名の付くシリーズだ。
 なので『最高マスター』ではなく『究極アルティマ』、彼らに相応しい偽名ではないか。

 俺の場合、『アルティマサバイブ』か?
 単純に『生者リビング』ではなく、『生存サバイブ』と例えた方が誤認しやすいだろう。

「というわけで、後ほど通達を。他者から見た場合のみ、そういう風に見えていると。自分の権能に誇りを持っているかもしれないから、自分の場合はそのままが一番だ……揉めると嫌だし、大会終了後に」

《畏まりました》

 さて、決めることも決めたし、三回戦の事でも考えないとな。
 今回使った手札は──手袋、宝玉、心臓、そして魔法。

 使えないのと使わないのでは、まったく意味合いが異なる。
 知られた以上、それを踏まえて戦略を練らないとならない……大変だな。


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