虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル中篇 その14



「…………」

 拡声器を失ったことで、再び小さすぎる声が聞き取れなくなった。
 しかし、その目は怒りに燃えている……傑作をぶち壊したわけだからな。

「ええ、お気持ちは痛いほど分かります。それでも、ここは勝ちを頂きます」

 革手袋からさまざまな生物が飛び出し、機械を破壊し尽くした。
 その結果、『造槌』を引きずり下ろしたのだが……戦力差は大して変わらない。

 結局、ロボを大きく動かさせる前に、なんとか破壊したからな。
 まあ、だからこそ怒っているのだが……ともあれ、ドローンや通常武装は健在だ。

「…………」

「来ますか──頼む」

 槌を振るえば武器が生まれ、それらを自在に使いこなす『造槌』。
 一流の鍛冶師は、己の武器を自身で試すため、相応に腕も立つ。

 わざわざ機械に頼らずとも、元より優れた武人でもあった『造槌』。
 俺は『セバスチャンSEBAS』由来の肉体操作で、強引に動いて回避を続ける。

 槌を叩き、生みだし、飛ばし、叩く。
 無限ループのようなごり押しの果て、やがて数百本の武器が生みだされた。

「──“■■”」

《旦那様、警戒を》

《……なんでだ?》

《『造槌』の職業【創槌使い】は、創造にリソースを用いています。これまでは身力、そして会場そのものを変換していましたが……残骸、そして数百の武器を変換しています》

 つまり、これから作られるのはこれまでで一番ヤバい武器ということ。
 事実、死亡レーダーが最上級に警鐘を鳴らしている。

 目の前に現れたソレは、

「────」

「こ、れは……」

《解析完了──『擬星剣[アドバンス]』。冒険世界の星剣、その模造品です》

「どうしてそれが……」

 冒険世界出身ではない『造槌』が、どうして……と思うが、まあ気にしない。
 知る手段は無いわけじゃない、今はそれよりも対処を優先するべきだ。

 俺もまた、:DIY:で生み出した本気の武器を取りだす。
 万能を求め、ありとあらゆる武具を体現する星具──『星核の武玉』。

 水晶玉のようなアイテムだが、俺の意思に合わせてその形状が変化する。
 強度が異常な武具限定の“千変宝珠”、と言ったところだろうか。

「起動──“星変万還”」

 そして、そんな武具の制限を解除するワードを告げる。
 水晶の内側から膨大な量のエネルギーが解き放たれ、選んだ形状である剣に纏う。

「!」

「こちらとて、何も備えていなかったわけではありませんよ。なぜ、そんな質問は後回しです。さぁ、これで終わりです」

 いくつか能力はあるだろうが、間違いなくアレは搭載されている。
 前は見ているだけだったが……もしもの時に備え、テストしてみますか。


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