虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル中篇 その13



 知り合いであり、『魔天』に選ばれた休人のロームが持つ『グランドマロット』。
 自分が使える魔法と共に、使うことのできない魔法を発動可能な『プログレス』。

 不相応な力を使いこなさなければ、その身が砕けるというリスク付き。
 そしてそもそも、名前を知らないと魔法を後続にセットできないサービスせいげんまであった。

《けどまあ、俺には『SEBAS』が居るからな。オリジナルではない魔法以外、全部網羅してくれているから助かるよ》

 基礎縛り部門のジーヂーのように、システム由来ではない武技や魔技も存在する。
 そういったものはさすがに不明だが、少なくとも旧来の魔法であれば把握可能だ。

「というわけで──“極小風ミニマムウィンド”」

『何が、極小だ! こんな暴風吹き散らしやがって!』

「そういう能力なんですよ……さて、このまま押させていただきますよ」

 意図して設定は、それぞれの属性における上位版の魔法としている。
 そこだけ見れば、まるで魔法の性能を強化しているように思えるだろう。

「重ねていきます──“極小氷ミニマムアイス”!」

『させるかよ──『起動』!』

 氷の魔法として発動したのは、周囲を凍土に誘うというもの。
 だが、辺り一帯に火属性の魔力が籠もった弾丸が放たれ、凍ることは無い。

 だが、まだ使える魔法はある。
 そしてその数だけ、俺は強力な魔法を組み込むことができる……が、『造槌』の言う通り高い抵魔性能があるみたいだしな。

「今度はこちらを──“極小雷ミニマムサンダー”」

『だからさせるか──『起動』!』

 機械といえば電気が弱点、そんな安直な攻撃もあっさりと防がれる。
 こちらの世界は鉱石の種類も多く、電気を吸収して無効化するなんてものもあるしな。

 かつて、【情報王】が己の『プログレス』に多くの魔眼を仕込んだように、複数のレア鉱石をドローンに仕込んであるのだろう。

『どうした、もうネタ切れか!?』

「……では、使いますよ──『星攻化身』」

 予選中、特に力を入れて創った五つのアイテムの内、手袋型のアイテムの能力を起動。
 拳を構えて、それを前に突き出す──それだけで能力は発動する。

『竜!?』

「どんどん行きますよ」

『なっ、くそ……』

 拳を振るう度、その先でさまざまな生物が生まれて『造槌』の搭乗するロボを襲う。
 魔物由来の素材は創造できないが、どうにか手に入れたとある素材で創った。

 それによって、あらゆる生物を拳から生みだすことができるアイテムが完成する。
 擬似的な物で、制約もあるので防御には使えないが……攻撃ならば使い放題だ。

 ここからは作業のように、ひたすら連打していくだけ。
 やがて、機械は猛攻によって破壊され──中から『造槌』が現れるのだった。


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