虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル中篇 その12



 ファンタジーVS科学。
 空飛ぶ剣とドローンが戦う姿は、一見そんな風に思えるだろう。

 だが実際のところ、それは合っているようで間違っている。
 ……物凄くどうでもいいが、タイトルの順番とかな。

 俺が剣を操るのは、『プログレス』という機械の産物──つまり機械。
 対してドローンは、槌を振るっただけで生み出された──つまりファンタジー。

 だからどうという意味は無い。
 ただ、いろいろとおかしくはあるが、まともだというだけ。

「人が科学を、山人族ドワーフがファンタジーに頼り何がおかしいのか、ということですよね」

「…………」

「こちらの世界の話ですよ。それよりも、小手調べは済みましたか?」

「……『■■きどう』」

 俺の『サウザンドエッジ』と『造槌』のドローンでは、数で優る俺に軍配が上がった。
 そもそも、能力で無尽蔵に生みだせる俺に対し、ある程度準備が必要だからな。

 超高速で生産ができる『造槌』の権能も、あくまで【創槌使い】経由での発動だ。
 そちらの利用にも、ストックした鉱石を混ぜている。

 地面を打てばそれを媒介に武器を作ることは可能だが、それでは品質は一定以下。
 そこにどれだけ付加価値を加えられるか、魔力や鉱石などでそれを補うのだ。

 ──だからこそ、『造槌』が何かを起動した際は最大限警戒しなければならない。
 空間を割いて現れたソレもまた、見ただけで誰もが強いと分かる代物だった。

「なっ……巨大ロボット!?」

『あー、あー。ようやく声が聞こえるな。改めて、ここからが本番だぜ』

 予め仕込んでおいたのだろう、拡声機により『造槌』の声が届けられる。
 ロボットのコックピットに入った『造槌』は、とても意気揚々としていた。

「……こんな奥の手まで隠し持っていましたか。いいでしょう、ならばこちらも全力で行きますよ──“神持祈祷:グランドマロットII”」

 対抗するように俺が取りだしたのは、道化師の杖と命名された能力。
 昔は条件を満たせていなかったが、今の俺ならばある程度使いこなせる。

『魔法で勝負か? 言っておくが、当然抗魔の性能も高ぇぞ?』

「ならば、それに勝つことができるほどの火力があればいいでしょう──“極小火ミニマムファイア”」

 発動したのは、俺が使える数少ない魔法。
 ただしその火力は名前でお察しの通り、種火を生む程度の弱々しい物。

 ──だが火種が付いた直後、急激に火は燃え盛りロボットを襲う。

『なっ、どうなってやがる!?』

「さぁ、ご自身でご想像ください」

 能力はシンプル、自分が使えない魔法を自分が使える魔法に続けて使えるというもの。
 魔法使いならざる俺だからこそ、使うことができる──魔法もほぼ選びたい放題だ。


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