虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル中篇 その11
改めて語るが、『造槌』の権能は超高速での生産である。
それそのものに武器を生み出す力はなく、【創槌使い】との相乗効果で行われていた。
そちらの能力もいくつかあるが、主に一度設計した鍛冶系アイテムを生み出すというのがメインの能力だろう。
つまり、作ったことがある物なら、槌を振るうだけで簡易的に生みだせる。
もちろん、相応の対価として魔力や時間を消費するが──時間は権能でクリア可能だ。
そして、俺と出会い地球の技術を知り、彼らが生みだしたモノ。
蒸気機関、化学兵器、多岐に渡っているのだが、特にヤバいのは──
「ビーム砲、すでに準備してありましたか」
「…………」
「ええ、たしかに予選の時間に用意もできたでしょう。一部の特殊な鉱石と刻印用の素材さえ集めれば、貴方に苦労する点など無いも同然ですし」
腕輪は空間系の魔道具。
こちらはその属性の鉱石を、【創槌使い】で即席加工して生みだしたのだろう。
そして、ビーム砲。
先ほど空間の歪みから取り出し、俺の体を弾け飛ばした超技術の産物。
彼らの隠れ里で採れる素材だけで、作れるように俺はかつて協力している。
ならば先ほどのフィールドで、見つけられない道理は無いだろう。
複雑な機構の場合、パーツを一つずつ生み出す必要があるらしいが、権能がクールタイムも即座に終わらせてくれるらしいので、全然問題にならない。
「さすがに使わざるを得ませんね──肉体の八割が千切れたとなれば」
現在、ビーム砲の影響で肉体は塵も残さずに消し飛ばされた。
残った二割も延命系の[称号]の効果で、死にながらにして残っているだけ。
装備だけは綺麗に残っているのだが、その内側に隠していた体が消え去っている。
一回戦目の内部侵食よりも、こちらの方が悲惨だった。
だからこそ、“神持祈祷”を切り替えて隠し持っていたアイテムを取りだす。
ズルくはあるが、ちゃんと予選中に作った物なのでギリギリセーフだ。
「基礎縛り部門と違い、こちらでは使用可能ですからね──しかも無尽蔵に」
大量に作っておいたのは、蘇生すらも可能なほど性能の高いポーション。
体に振りかけると、失われた部位が瞬時に復元されて十全な姿を取り戻す。
……魔法的演出があるので、子供や女性でも見ていて目を背ける必要は無いぞ。
「さぁ、次へ行きましょう」
「……『■■』」
俺の言葉に応じるように、小さく呟いて腕輪を再び起動する『造槌』。
その周囲には、ドローンのような物が何体も浮かび上がっている。
こういう技術も、研究材料として渡していたからな。
仕方がない、やるからにはとことんやって勝たせてもらうぞ。
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