虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル中篇 その10
相手は『造槌』。
就いている職業は【創槌使い】と言い、振り上げた槌で武具を生み出すことができるというもの。
あくまでも権能は、鍛冶系の能力を超高速で行うという代物だ。
ある意味俺と同じ、権能そのものをどうこうできないタイプの使い手である。
「──“ダンシングエッジ”!」
千本の剣を浮かべて、自由自在に操るというのがこの能力の効果。
しかし、本来これを使っても制御しきれないため、同時操作数に限界が生じてしまう。
せいぜい同じ行動を取らせるか、予めプログラムして誤魔化すのが限界のはず。
……だが、俺は『セバスチャン』経由で、試合中も『SEBAS』と繋がっている。
《能力との接続──成功しました。剣を統率下に置き、操作を開始します》
《了解。なら、『統天』に切り替えるぞ》
試合中ではあるが[メニュー]を操作し、『生者』のおまけ権能で[称号]を切り替えておく。
俺の持つ四つの『天』の内、『統天』は支配下の存在を強化できる。
作る品すべてが一級品の『造槌』の武器に対抗するべく、強化を行うのは当然のこと。
「っ……」
「妨害ですか……ですが、無駄です」
《『サウザンドエッジ』を操作。破壊後、再構築して防御を行います》
的確に嫌がる牽制をすることで、時間を稼いでくれる。
その間に、変更は完了──剣の性能は飛躍的に向上し、さらに戦いを引き延ばす。
「準備は整いました。さぁ、舞い踊りましょう──“地裂脚”!」
今は『バトルラーニング』など使っていないが、そもそもは『SEBAS』が結界を動かすことでやってくれていたこと。
そして何より、今は【試験職】をセットしているのでシステムの補正が若干入る。
動きの方は完全マニュアルで、仙丹から何まで全部を『SEBAS』が担当した。
それによって何が起きるのか、答えは舞台の破壊っぷりにある。
割れた地面に罅が入り、上手く武器の生成が行えなくなったのだ。
「続けてまいりましょう──“天閃腕”!」
「っ!」
「剣と共に踊り続けてください!」
勢いよく地面を踏みつけ、得たエネルギーすべてを腕に回して薙ぎ払う。
その動作に仙丹を用いることで、驚異的なまでに性能を高められる。
加えて、回避先に『サウザンドエッジ』が待機しており、容赦なく攻め立てていく。
武器を生み出して対処しているが、やはり簡易な武器では一級品でも限界があった。
「──『■■』」
だからだろう。
ついに『造槌』もまた、反撃に出る。
腕に嵌めていた輪っか、それはとあるアイテムを封印していた代物だった。
「ははっ、まさか短時間で御創りになられるとは……末恐ろしいですね」
照準を俺に合わせ、引き金を引く。
その瞬間、俺の肉体は弾け飛ぶのだった。
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