虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル中篇 その09



 時間は過ぎて二回戦が始まる。
 毎度のように舞台まで徒歩で移動し、そのまま上に向かう。

 その間、例のごとく司会による紹介が行われている。

≪赤コーナー、冒険世界より参戦。物理も魔法も、薬物だって乗り越えた。果たして、うすれば敗北を知ることができるのでしょうかか──ゴンベエ!≫

 ちなみにだが、今の俺にはブーイングではなくそれなりに歓声が上がっていた。
 基礎縛り部門の優勝者(仮)、という評価が付いているからだろう。

 まあ、貶されるよりは応援される方が嬉しいのは事実なので、ありがたく受け取る。
 ……子供たちに、恥ずかしいことはしないでと言われたので手を振ったりはないが。

≪青コーナー、夢想世界より参戦。その槌が生みだすのは千変万化の武器の数々。その一つ一つが一級品、戦う鍛冶師は己を鍛えるために現れた──スザミス!≫

 ……呼ばれた名前、そして上がった舞台で見た人物に警戒心は最大まで高まる。
 基礎縛り部門で【暗殺王】と相対したように、こういうケースは想定していた。

「……全力で挑ませてもらいます」

「…………」

「すみませんね、このイベント中は拡声装置が使えないんでした。今度、『プログレス』に組み込んでお届けしますので」

 正確には、彼の場合『プログレス』を使うことができないので擬似版ではあるが。
 そう、強者の内『プログレス』とは異なる力──権能を持つ『超越者』が一人。

 大衆が槌を介して発動する『プログレス』と思う能力は、その権能による者。
 保持者はこの世界にただ一人、夢想世界ここはこうも呼ばれている──イベント世界と。

「里長さん、『造槌』さん、スザミスさん。適した呼び方が分かりませんね。まあ、それは別にいいですか。今はただ、挑む者と挑まれる者……それだけで充分ですよね?」

 俺の問いかけに、巨大な槌をただ前に突きつけることで応える『造槌』。
 俺もそれで充分だった……祈りを取るべく構えを取り、始まる瞬間を待つ。

≪それでは第二回戦──開始です!≫

「まずは、こちらから──“神持祈祷:サウザンドエッジII”」

「…………」

 俺は祈りを捧げ、千の刃をこの舞台に展開した。
 対する『造槌』は、槌を勢いよく地面に叩き付けて武器を生み出す。

「勝負です──“ダンシングエッジ”!」

「ッ……」

 刃がすべて勝手に浮き上がり、自動的に戦闘を行ってくれる。
 それが『サウザンドエッジ』の第二形態、今だからこそ使える能力だ。

 同じく『造槌』も武器を浮かび上がらせ、こちらに向けて射出してくる。
 今回は遠距離戦になるか……? いや、俺は俺のやり方で勝たせてもらおうか。


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