虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル中篇 その08
《──プログレスを介して、創造神様への要望を送信しました。そう遠くない内、旦那様以外の恩恵では特定の能力を使うことができないようになるようです》
迅速かつ丁寧に、『SEBAS』が対応をしてくれた結果だ。
錬金術師の細やかな願いも、これで満たされたと言えよう……うん、気にしない。
そもそも、『プログレス』に多様性を求めたのは誰でもない俺。
なのに危険だからといって、使えなくされる方が生みだした意味を無くしてしまう。
もちろん、俺の主張を第三者が聞けば罵詈雑言に晒されるのは確定だけど。
だからこそ、似た案件が出ないように対策しなければならないのだ。
「まあ、改めて考え直す機会になったよ。包丁が調理に便利でも殺人に使われるように、ダイナマイトが今じゃ戦闘用途ばっかりみたいに。どんなモノだって、結局は使い手次第になっちゃうってことだな」
《確認したところ、すでにプログレスを信仰しだす者が現れているとのこと。加護はまだ与えていなかったようですが、改めて熟考するとのことです》
「……そうなるよな。プログレス自身の格を上げなければならない以上、信仰そのものはやる必要がある。つまり、いずれは通っていた問題なわけだ。ハァ、やっぱりピックアップする必要もあるかー」
現実でも、希少度の高いモノや危険度の高いモノはその情報を纏められている。
その方が必要な時、すぐに一気に確認できるからだろう。
これまではそれでも、そこまで気にしていなかったが……今回の件で決めた。
「『SEBAS』、やってくれ。目を通す必要もあるな」
《……よろしいのですか? 能力の在り様はすなわち、人の在り様を意味します。つまりは──》
「いいんだ……とは言い切れないが、同じことが起きる方が嫌だしな。可能な限り、丁寧な対応を心掛けてくれ」
《畏まりました》
プライバシー的な面でも、かなりデリケートなのが『プログレス』の在り様だ。
人のパーソナリティに触れているのだ、当然と言えば当然だけども。
それをすべて使えるということは、それだけ人の悪意に触れる可能性が多いということでもある。
奪う能力、支配する能力……そういった能力の発現者は少なくない。
俺は意図してそれらの能力を使わないのだが、それでも利用する者は現れる。
知っておかないとならないだろう。
これからのEHOライフでも、これは重要な事柄なのだから。
「──まっ、気分を切り替えて二回戦の対策でもしますか。『セバスチャン』のままにしてあるから、サポート頼むぞ」
《仰せの通りに》
そんなこんなで時間を潰し、俺は二回戦へと赴くのだった。
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