虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル中篇 その07
何が起きたのか、まあそれは[ログ]を見れば一目瞭然だった。
死因は細菌による捕食、つまり体内から食い荒らされた結果で死んだのだ。
しかし、気になるのは先ほど錬金術師が発動した能力名。
あれそのものが俺を殺したわけではなく、あくまでも菌が俺を殺した。
ならばあれはどういった効果なのか。
その答えを俺は持たない……が、持つ者が俺には侍っていた。
《──“ウルスウィルス”。その効果は、生みだした細菌の性能を強化するというものです。単純に攻撃力が上がるだけでなく、繁殖力や生命力なども強化されるため、旦那様の生みだした菌をも喰らい成長するでしょう》
俺と同格の権限によって、『プログレス』のすべてを知り得る『SEBAS』。
その権限で、『ベストペスト』の詳細を調べてくれたようだ。
つまり錬金術師が生みだした厄介な細菌、それらがいろんな意味で強くなっている。
俺が対抗するように菌を生み出しても、補正が無い分劣ってしまうわけだ。
「無駄々ムダダむだだぁあああ! もう終われ、速く死ね! この忌むべき力を、いつまでも使わせるなぁああ!」
「──“星護結界”」
「はっ?」
特殊生産部門で作ったアイテムが、普通なわけがない。
俺が頭に装備している『星鉱の頭環』、その装備スキルを発動した。
名前の通り、発動後は結界が展開されて害のあるモノを遮断する。
そして、内部に入れた場合は邪なるモノを浄化する──菌もその対象に含んでいた。
「この結界、私に合わせて動かすことができるんですよ」
「それがどうした!」
「そのままの意味ですよ。もう、終わりにしましょう」
一歩、ただ前に進めば触れた細菌たちは滅菌されていく。
能力も優秀だが、それ以上に星鉱石製のアイテムは性能が高いのだ。
さらに進めば進むほど、錬金術師との距離は近づき菌は死んでいく。
すでに死んでいるし、時間もそう長くはない──蹴りを付けよう。
「──“神持祈祷:ストームスーツ”」
嵐を身に纏い、風が菌を押しやる。
速度などの補正を受けながら、拳を引き錬金術師を殴りつけた。
「げほぉっ!」
「菌で攻めることで、己は何もせずとも勝利出来ていたようですね。なるほど、それを成し得ることができるのは貴方だけの方が都合も良いでしょう」
「違う! そのような愚かな──」
「もういいでしょう。今はただ、眠りにつきなさい」
仕様については、『SEBAS』経由で対応してもらうとしよう。
そんなことを思いながら、俺は錬金術師の生命力をゼロにするのだった。
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