虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル中篇 その02



≪ただいまより特殊生産部門、その前哨戦を始めます! 参加者は皆さん、転移可能な場所へ移動してください!≫

 定刻となり、参加者が集められる。
 転移を受け入れ、上がった舞台でまずやることは参加者の把握。

 その間に説明が再度行われるが、気にせず集中して調べる。
 俺の知っている生産者は少ない、だからこそ知っている者を警戒すべきだ。

「……あっ」

『…………』

 そして、目撃する──数人の知人を。
 てっきり先ほどのように、一人か二人かと思っていたのだが……そうだった、あの人たちは基礎程度じゃ縛れないからか。

 訳アリだった【暗殺王】はともかく、強者である彼らが参加する理由が無かった。
 だが、今回は生産そのものにたいして・・・・縛りが無い……出てもおかしくは無い。

「いずれにせよ、真面目にやらないと勝てないかもな」

≪それでは、こちらの転移門よりフィールドへの移動をお願いします!≫

「……頼んだぞ、『SEBAS』」

《畏まりました》

 前回はサポートを受けられなかったが、今回はその対策もしてある。
 休人の大半が勢いよく駆けだす中、ゆっくりと歩を進めていった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 擬似フィールド

 亜空間のような……違うな、一番近しい環境は箱庭だろう。
 環境を予め定め、それに合わせて内部空間の調整を行ったのだ。

 海、山……相反するものが同時に視界に収まるのも、それが理由だろう。
 さまざまな環境の中で、素材を集めることが求められている。

「──“神持祈祷:マイルームII”」

 そんな中、俺は女神に祈りを捧げた。
 求めるのは周囲から隔離された、安全な空間を生み出す能力。

 神はそれに応え、一時的にそんな能力を貸し与える。
 すぐさま能力を起動、展開された空間内へ移動した。

「ふぅ──『セバスチャン』起動」

 祈りとは違う、管理者として独自に入手したもう一つの手段。
 インストールによって得た、まったく異なる『プログレス』の能力を内部で起動。

 執事としてもっとも休人たちに知られる名前を冠した、補助特化の能力。
 これを起動したとき、途絶されたはずの繋がりが再び結びつく。

《──接続を確認。成功しました》

「よし、成功だな。さっそくで悪いが、必要な物を教えてくれ」

《すでに纏めてあります──こちらに記した物をご要望ください》

 繋がった能力の本来の主、『SEBAS』からやるべきことを教えてもらう。
 能力の効果は俺の補助、俺が使った場合は体を共有するような感覚となる。

 まあ、普段からそんな状態なので、さして問題にはならない。
 現に視界を共有して表示された情報も、よく使うUIと同じようなものだし。

「じゃあ、始めよう──:DIY:起動!」

《:DIY:が起動されました
 使用者『ツクル』の指定能力値──概念崩壊……成功しました
 アイテムの作成成功後、または条件無視によって解除されます》

「まずは、必要な環境を整えないとな……」

 目に映る物を次々と言い、生産設備を整えることから始める。
 ルール的に、本当なら用意されているらしいが……これも不可能ではないのだ。


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