虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル前篇 その25

先日、連続更新していますのでぜひ見てください
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 今のところ、無尽蔵に何かを生み出すことができる『プログレス』は存在しない。
 何かしらの代償を支払うことで、相応の対価を得ているだけだ。

 魔法ガチャの『タブースペルズ』、事前に獣の性質を取り込む『ビーストオーブ』。
 そうして発動に何らかの条件がある能力、そこにジーヂーの能力もあるのだろう。

 少なくとも、力が欲しいからとすぐに得られるほど簡単なものではない。
 創造、そのために必要なプロセスをクリアしないとならないはず。

「──“神持祈祷:ダメージイーブン”」

「むっ? これは……」

「少し、追い込ませていただきましたよ」

「一定量の痛みを還元か? ふむ……うむ、ちょうど半分か」

 ダメージを分かち合う能力だが、条件が厳しいので本来は使い物にならない。
 もっとも厳しいのは、自分の痛覚緩和度合いに応じて性能が落ちること。

 初期では半々になるダメージ。
 しかし自分の痛覚緩和が半分だったなら、自分が受けるダメージはそのままに、相手が分かつダメージがさらに半分となる。

 最初から使っていなかったのは、ある程度ダメージを受けていないと発動しないから。
 そのうえで一定時間は戦闘しないと、対象に含むことができないんだよな。

「貴殿、痛みの方は?」

「…………勝つため、ですので」

 もともと死にまくったことで、『ドM』という[称号]を獲得していた。
 効果は当然、痛みを快感へ変換する……もしくは、痛覚過敏にするというもの。

 つまり、本来の痛覚緩和機能のリミッターが取り外されている。
 その方が便利なこともあり、普段からそうしている……ので気にならないんだよな。

「その意気や良し! ならば、儂も全力で行かせてもらおう──“越境”!」

 だが、そんな事情を知らない翁は、まるで俺が覚悟を決めたように思えたのだろう。
 だからだろうか、いかにもパワーアップします……みたいな感じの武技を発動。

 体から噴き出すオーラが可視化され、また体内に取り込まれて循環している。
 それを何度も繰り返せば、死亡レーダーが鳴らす警鐘の速度がどんどん向上していく。

「貴殿の罠が力を完全に発揮する前に、終わらせてしまえば良かろう」

「なるほど、とても良い考えです……私が相手でなければ、ですが」

「死んでも残る貴殿が使えば、相手よりも長く残ることができるわけか。うむ、良いものができそうじゃな」

「……そうなる前に、倒させていただいた方がよさそうですね」

 能力無効化の武技でも作られたら困る。
 瞬時に[称号]を切り替え、翁へと攻撃を始めるのだった。


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