虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル前篇 その24

連続更新です(06/06)
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 俺が使える搦手は多い。
 生成された『死天』のアイテム、職業能力で使える魔法、“神持祈祷”で借り受けられる『プログレス』。

 基礎的な能力しか使えない縛りの最中だろうと、使うことのできるチート能力。
 だがそれは、あくまで俺にとっての話……相手にとってそうとは限らない。

「くっ──『潰死の暴圧』!」

「ふむ……なんとなく、儂の“龍砲”に似ておるのぅ──“柳流”」

 相手を吹き飛ばし、圧し潰す。
 先ほど得たアイテムを使ってみたが、あっさりと無効化される。

 回避系の武技みたいだが、範囲系の効果の中央に居ても避けれるのは異常だ。
 演武のように舞い踊っているが、それを封じるぐらいしか勝ち目は無いか。

「不思議そうじゃのう。まあ、驚くのも無理はない。初見のものに見抜かれるほど、まだ衰えておらんわい」

「……そうですか。では、なんとしても攻略しますよ──“神持祈祷:ベストペスト”」

 俺を起点に散布される──細菌。
 肉体的に強固であっても、病には勝てないという定番のアレを狙う。

「甘いわい──“旋嵐”!」

 だが、そんなやり方もあっさり無効化。
 その場で高速回転を行うと、発生した風で散布したウィルスを吹き飛ばす。

 そして、その風はそのまま俺に直撃。
 風の攻撃だけでなく、自分自身で生み出したウィルスに蝕まれて死に続ける。

「がはっ、けほっ……な、なんともお強い」

「若いもんにはまだまだ負けんよ。しかし、なんとも手数の多い……その厄介な手から無くした方が良いかのぅ?」

「いえいえ、それには及びませんよ。足掻かせてもらいますので──『疫死の禍風』!」

「むっ、これは……」

 死を生かす、字的には実に矛盾した言葉。
 そんな力で生み出したのは、先ほど起きた事象をそのままなぞるかのような暴風。

 威力も内包する病の性質の悪さも向上、より上位の技が無ければ受けられないだろう。
 そのまま打ち返すことは考えていないようで、翁はあっさり後退を選択。

 なお、先ほどの『ベストペスト』と違い、『死天』製の疫病は即死級。
 防御で乗り切り、呼吸してくれればこちらの価値だったのだが……名前でバレるか。

「どうやら、長引かせれば長引かせるほど厄介になるようじゃな……貴殿、それでも急く理由が何かあるのか?」 

「……ご想像にお任せしますよ」

「そうかそうか、ならば創造しよう。死人を殺し、孫に勝利を見せる技を」

 言葉遊びをする辺り、まだまだ余裕な翁。
 対する俺は刻一刻と、強制退場へのタイムリミットが迫っている。

 短期決戦しか道はない……なんとなく対策も浮かんだし、やってみますか。


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